FF7

□彼女のエスペランサ
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「ユフィ、交替するよ?」

ノックの後に、開いたドアからひょこっと顔を覗かせたエアリスに、ユフィは瞠目した。

「エアリス!もう大丈夫なの?」

「うん、ティファにケアルかけてもらったし、もうすっかり!」

心配して駆け寄るユフィに、エアリスは笑顔でピースサインを突き出して、大丈夫だとアピールした。

「なら良いんだけど…コイツ、もう一発殴っとく?」

真剣な面持ちで、ユフィは親指をくいっとベッドに眠る金髪の青年――クラウドに向ける。

「っもう!ユフィったら!」

吹き出したエアリスを見て安心したようにユフィも笑った。
そして、ひらひらと手を振りながら扉へ向かう。

「そんじゃ、目が覚めたらつねるくらいしてやりなよ。女の子殴るなんてサイッテー!ってね」

「ふふっ、考えとく」

エアリスの返事に満足したのか、ユフィはニッと笑うと「じゃあ後よろしく〜」と部屋を後にした。
閉まり切った扉に向かって笑みをひとつ零すと、エアリスはベッドの傍にある椅子に腰掛けた。

「…クラウド」

ベッドの上のクラウドは長い睫毛を伏せ、規則正しく寝息を立てていた。
端正な顔はそのままに、口元には薄く青アザが残っている。
先刻、古代種の神殿にて錯乱した彼はエアリスに殴りかかった。そしてそれを止める為、バレットがやむを得ず彼を殴ったのだ。

「綺麗な顔、台無しだね」

優しくその傷を撫でながら、苦笑にも似た微笑みをエアリスは零した。
そしてそっとクラウドの額にその華奢で小さな白い手を乗せると、静かに瞳を閉じた。

「ね、聞こえる?わたし、全然気にしてないよ」



わたし、ほんとうは恐かったの。
誰にも聞こえない声、聞こえるの。
ざわざわざわざわ
頭の中に響いて、でもどうすることも出来なくて。
耳を塞いで眠ったりしたこともあった。
…意味、無いのにね。
でも、ね、クラウド。
貴方言ってくれたよね?




『俺が…俺達がいるだろ?』



わたし、とっても嬉しかった。ほんとだよ?
だから決めたの。もう耳は塞がない。



す、と瞼を上げ、クラウドの額から静かに手を離すと、エアリスは立ち上がった。

「もう、行くね」

星が警告してる。
“キケン”、と―――。
でもわたし、甘んじるつもり、ない。
わたしが行くのはだいすきな皆と、そして誰よりも大切なクラウドと“明日”を過ごすため。

「次会ったら、クラウドに怒られちゃうんだろうな」

その様子が脳裏に過ったのか、くすくすとエアリスは楽しそうに笑った。

「じゃあ今度こそ、行く、ね」

エアリスはそう言うと踵を返した。
背筋をぴんと伸ばし、扉へと一歩々々歩みを進める。そして、扉まで辿り着いて振り返ると、未だ眠るクラウドに極彩色の笑顔を向けた。





「いってきます」





わたしに出来ること、見つけたから。
貴方が二度と悪い夢を見ないように――――。



だいじょうぶ、“明日”はこの向こう。



20101103 mai
→アトガキ

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