FF7

□My dear…
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私の知っているエアリスは、明るくて前向きで、いつも花のような笑顔で自然と皆を和ませる―――そんな人。





○My dear…○





「どういうこと?!」

セフィロスを追い求めて訪れた自分の故郷―――ニブルヘイムの姿に、私は愕然とした。

「燃えちゃったって言ってなかったっけ?綺麗になってるよ?」

ユフィが感心したように横で呟く。
“綺麗”、なんてもんじゃない。
“元通り”なのだ。
街並みも、あの給水塔も、クラウドの家も、わたしの家も―――。
気味の悪いその光景に私は身震いした。あれは確かに夢なんかじゃない。セフィロスに切られた痛みは今も鮮明に憶えてる。

「ティファ」

エアリスが黙り込んでいた私の肩をぽんと叩いて、顔を覗き込んできた。

「きっと理由、あるんだよ。
大丈夫、誰もティファが嘘吐いてるなんて思ってないよ」

そう言って優しく微笑むエアリスに、自然と心が解れていくのを感じた。

「ね、ユフィ?」

「当ったり前じゃん!!あのチョコボ頭ならまだしも、ティファは嘘なんてつかねーもん!」

「…ほら、ね?」

そしてエアリスはまた優しく微笑む。

「…ありがとう」

エアリスの笑顔は魔法のようだと思う。ケアルなんかよりもよっぽど効く癒しの魔法。
どんな状況も、その笑顔1つで一蹴してしまう。
そしてこの道中、私だけじゃなく他の皆も彼女の笑顔に少なからず助けられている気がする。




「まだ2時…」

夜中にふと目が覚めて、枕元にある時計に目をやりながら私は溜息を吐いた。
ニブルヘイムに再訪して以来眠りが浅いのは気のせいじゃないと思う。
すぐには寝付けなくて何となしに寝返りを打つと、隣のベッドに眠るエアリスの背中が視界に入った。

そして、思わず目を瞠った。

エアリスの肩が震えている…ような気がした。

“どうしたの?”

その一言が喉を突いたけど、思うように口が動かない。
結局どうすることも出来なくて、ただ見ていることしかできなかった。
だって、あまりにも静かに泣いているから―――。




「おはよう、ティファ!」

朝になって目が覚めると、エアリスの姿は既に部屋にはなく、慌てて身支度を整えて階下に降りると、いつもの様に笑っている彼女がいた。
昨夜の出来事がまるで嘘のように。

「お、おはよう…」

「なーんか元気ない?だいじょぶ?」

つい吃ってしまった私をエアリスが見逃す筈もなく、気遣うように見つめてきた。
…そうやっていつも人のことばかり。エアリスこそ大丈夫なの?
心の中でそう呟いて溜息を吐く。
彼女は決して人前で弱味を見せない。
もっと色々話してほしい。
だけど、そう思ってるくせに昨夜のように何もできない自分が苛立たしくて私は小さく舌打ちした。

朝食の最中もエアリスは笑顔を絶やすことなく、楽しそうに皆と談笑していた。
そして、出発の準備が整って一息ついた頃に、ふと彼女の姿が見えないことに気が付いた。

「エアリスは?」

近くにいたユフィに声を掛ける。

「そういえば見てないなあ」

そのうち戻ってくるでしょと続けるユフィに適当に相槌をうつと、私は足を外へと向けた。
そして、見つけてしまった。
エアリスが今にも泣き出しそうな空を1人見上げているのを。
私は何も言わずに近づくと、エアリスを後ろから抱き締めた。今度は確信があったから。

「どうしたの?ティファ」

でも振り向いたエアリスは確かに笑っていて。

「…泣いてるような、気がしたの」

馬鹿なことを言っていると思われたかもしれない。そう思って私は視線を下にやった。
だけど、彼女はただ「ありがとう」と言ってまた笑った。
私にはそれが、素直じゃないエアリスの初めての弱音に聞こえた。




私の知っているエアリスは、明るくて前向きで、いつも花のような笑顔で自然と皆を和ませる。
そして人知れず、涙を流す。

ねぇ、エアリス。
今度貴女がまた肩を震わせていたら、そっと手を握るから。
優しく手を握るから。
貴女の哀しみが少しでも和らぐように。



明日にはまた、笑えるように。

20101021 mai
→アトガキ

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