FF7

□わたしのヒーロー!
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「もう、ね、すっごくカッコ良かったんだよ〜!」

「ちょっ…エアリス!恥ずかしいじゃないっ」

「ナニナニ〜?2人して頬染めちゃってさー!」





○わたしのヒーロー!○




とある夜、宿のロビーに集まるクラウド一行の面々たち。
宿に泊まれた時は、各々部屋で手持ち無沙汰になると自然とここに集まるのが日課になっていた。
今日も今日とてユフィをはじめ数名がここで団欒していると、エアリスとティファが2階から降りて来た。
何やら騒ぎながら。



「前々からティファはカッコ良いって思ってたけど、ほんと素敵だったな〜!」

「だからもういいって!」

恍惚な表情のエアリスに、照れ笑いを浮かべるティファ。

「なんだよ、勿体ぶらずに聞かせろよ!」

そんな2人のやりとりに、痺れを切らしたバレットが煽り、微動だにせず黙って見ていたヴィンセントまでもが、同意するかのように首を上下に振る。

「聞きたい?聞きたい?」

一方のエアリスはというと、話したくてうずうずしている様子。

「アタシも聞きたーい!」

「しょうがないなぁ〜」

言葉とは裏腹に満足げな表情で話し始めたエアリスの傍らで、ティファは恥ずかしそうに俯いた。

時は半刻ほど前に遡る。

「こんな立派な宿久しぶりね!」

「ほんと!お風呂、広いかな?」

宿の部屋に着いた2人は寛ぎながら荷物の整理をしていた。

「あとで見に行きましょうよ」

「うん!広いといいなぁ。うーんと足、伸ばして浸かりた・・・〜〜〜っっ!!」

「エアリス?」

不自然に言葉が途切れたエアリス。そんな彼女に背中を向けていたティファは振り返ろうと体を動かした。
だが、振り返る前にエアリスが思いっきり飛び付ついてきた。

「ティ…ティティファ!!」
「エアリス!?どうしたの!?」

いつもと全く違う様子のエアリスに、ティファも焦りを見せる。

「あ…あれ……!」

ティファの胸に顔を埋めたまま、エアリスが震える手である方向を指差した。

「あれ?」

その指差す方向へディファが視線を移動させると、そこには…

「あ、ゴ「いわないで〜!」

ティファの言葉を遮り、エアリスは更にティファに縋りつく。
そう、そこにはGのつく世の中の人の大半は苦手とするであろう生き物がいた。

「わたし、あれだけはダメなの!黒くて光っててあの独特な動き、気持ち悪くて…」

ティファの腕の中で縮こまるエアリス。
普段は怖いもの知らずに先頭立って突き進んで行く彼女のこんな姿を見れるなんて、とティファは内心嬉しい気持ちが広がって思わず口元が緩む。
しかし、そうしてはいられない。奴を仕留める為には一刻を争うのだ。ティファはエアリスの両肩を掴んで体を離し、目線を合わせると、

「私に任せて!」

と、力強く言い放った。

***

「それからは、ね。ティファがその辺にあった雑誌で、目にも止まらぬ速さですぱーん!て。ほーんとカッコ良かったんだから〜」

皆に話し終えたエアリスは満面の笑みを浮かべる。

「へー!やるじゃねェか、ティファ!!」

バレットが感心した様子でティファの肩を軽く叩く。

「だからエアリスは大袈裟なのよ!
お店によく出るから見慣れているというか、何というか…」

「そんなことない!わたし、ティファのお嫁さんになりたーい!」

そう言うとエアリスはティファの腕に自分のそれを絡ませた。

「あら、エアリスみたいな可愛い子だったら私は大歓迎よ!」

「やった!両思い、ねっ」

2人はふふっと仲睦まじく微笑み合う。

「あーあーそんなこと言っちゃって!クラウドが聞いたら悲しむよー?」

そんな2人の様子にユフィがいやらしく笑んでエアリスを小突いた。

「うーん、だってクラウド、ティファみたいに勇敢に立ち向かってくれなそう…」

「言えてる!」

「確かにアイツあーゆーのダメそう!」

「…なんて、クラウドには内緒、ね?」

そういう言うとエアリスは人差し指を口の前に持ってきて、しーっとジェスチャーした。

「全く女ってヤツは…」

盛り上がる女性一同を横目にバレットは苦笑いを浮かべ、ヴィンセントは無言のままソファーから腰を上げると部屋をあとにした。

***

明るい笑い声が響くロビーへと繋がる廊下に、佇む金髪の青年がひとり。

「く、クラウド…オイラはクラウドも充分カッコ良いと思うよ…?」

彼の傍らにいた赤い毛をした獣が、気遣わしげに声を掛ける。

「……」

その獣の頭をひと撫でするど、青年はロビーとは反対の方向へ足を進めた。
金色の髪が部屋から漏れる明かりを受けて、切なげに揺れていた。


end
20100919
→アトガキ

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