DOUBLE WHITES*DOUBLE KINGS
□白雪姫
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「なぁ、みんな!白雪姫ごっこしないか!?」
そう言い出したのはいつも元気で人気者の拓也だった。
ここはノアの町の中央広場。中々広くて自然も多いので、子供たちの遊び場としては断トツの人気がある。
学校が終わった後、暇になった映士、拓也、信明の三人は、学校に行かずに家で勉強をしているしらゆきを連れて、毎日ここに集まるのが日課だった。
「白雪姫はしらゆきな! ノブはいぢわるな継母と魔女! 映士は小人のいっつも怒ってばっかりの奴!」
拓也は配役を手早く決めていく。彼はいつも皆を引っ張っていく、四人組の中でもリーダー格の存在だ。
「なんでオレが怒ってばっかりの小人になるんだよ!!」
勝手に押し付けられた役が小人で、おまけに怒ってばかりの奴とまで決められてしまった映士は勿論黙ってはいない。
キラキラした笑顔を振り撒きながら拓也はさらりと「だって、ピッタリじゃん! 映士はチビだしいっつも怒ってばっかりだから」と口にした。
「そんなことねぇもん! 小人なんてだせぇ役やってられっか!! それに何でたくやが王子なんだよ!?」
「だってこの中で王子が似合うのはおれだけじゃん!」
拓也は幼いながらも整った顔をしている。加えて頭も良くて底抜けに明るい。
そんな彼は年が近い女の子だけでなく、大人にも絶大的な人気があった。
そして本人もそれを知っているのだ。
頬を膨らまして大声で文句を言う映士とそれに負けじと言い返す拓也の間に信明が横から割って入った。
「二人ともケンカしないでよー。遊びなんだし誰が王子で小人でもいいでしょー?」
やんわりとやたらゆっくりな口調は信明の特徴だ。
「ノブ…でも!!」
映士が反論しようとしたが、叶わなかった。
「…これ以上言うなら僕が王子役やるけど?」
映士と拓也の肩をガシッと掴むと、信明は低く囁いた。
映士と拓也には、口元を片方つり上げて笑う信明の顔の上半分に影がさして見えた。
ノブはいつも穏やかだが四人を上手く操る影の支配者でもある。
二人はすぐさま口喧嘩をやめると、四人は拓也が考えた配役で白雪姫ごっこを始めることにした。
「何でオレが小人なんだよ…たくやのやろー」
話が始まり、適当なポジションにつくと、映士はぼそりと呟いた。
不機嫌気味で小石を蹴る映士の横にしらゆきが寄る。
「えーじ、もしかして白雪姫がしたかったの? だったら変わってあげるよ! しらゆき、小人でもいいから」
眉を下げて不安そうに映士を見上げる。
「いやっ違っ…オレは白雪姫がやりたかったんじゃなくて…」
とんでもない勘違いをするしらゆきに゙王子役がいい゙なんて恥ずかしくて言えなかった映士は言葉に詰まった。
「ホントにしらゆきがおひめさまでいいの…?」
しらゆきは小首を傾げて大きな紫色の瞳で映士をじっとみつめた。
「ゔ……」
映士は顔を真っ赤にして俯きながらボソリと呟いた。
「いい。白雪姫はしらゆきがきっと一番似合う…から……多分ッ!」
照れ隠しで最後に「多分ッ!」と付け加えたが、小さな声でもちゃんと聞き取れたらしいしらゆきは、ぱぁっと花のような笑顔を咲かせた。
「ありがと! じゃあ今日はしらゆきがお姫さま役するね! でも次に白雪姫ごっこするときはえーじがお姫さまできるようにしらゆきがたっくんに言ってあげる!!!」
出番がきたしらゆきは、きらきらと宝石のような紫の瞳を輝かせてそう言うと、舞台として使っていた演説用の石段に向かって走っていった。
映士が白雪姫役をしたかったという誤解をしたまま。
「あ゙…。なんであいつはあんなにボケボケなんだ…?」
おっとりのほほんとした雰囲気の゙いぢわるな魔女゙の信明が持ってきた毒リンゴを食べた白雪姫は、にこにこして某和風番組に出てくる女性のようにくるくると回りながら地面に倒れ込んだ。
倒れる際に足に怪我でもしないかとハラハラしてしらゆきを見ていた映士だが、心配は要らなかったようだ。
「『あ〜れ〜』って何かちがう気がするんだけど…」
苦笑いをして小人役の映士は倒れた白雪姫に駆け寄るべく石段に登る。
映士は拓也に小人全員分の台詞を言わされ、渋々白雪姫の死を悲しむ振りをした。
さて、このシーンが終われば王子役の登場なのだが・・・。
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