小説

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「こんのぉ〜〜〜…」


5月です。合服です。川越理京(13)です。佐藤一純(13)です。

「バカ一純ー!!」
「わ゛―――っっっ」



界に13人の一純


またまたケンカしてます。しかも理京が一純を階段から突き落としました。だからそれ犯罪だって。大体彼氏じゃん!!

スタスタスタ

理京はそのままその場を後にした。一純は果たして無事なのか…!?

「あっ…理京っ待っ…」

あ、無事だった。

「待ってーっ!!;;」

パタパタパタ…

一純は起き上がると、理京を追って走り出した。一純が倒れていた場所には何故か跡が。

もぞっ

スゥ…

アレ? 今その跡から何か…



≪昼休み・2-2≫

「はぁ? また佐藤とケンカしたの?」

飯根波音(13)が、呆れ顔で言った。

「う゛〜〜〜っ」

理京、何かうなってます。

「今度は何で?」

波音が続けて聞いた。

「明日のデート、ドタキャンされた…」

理京は、溜息交じりで答えた。

「はっ、それだけ!?」

横にいた村上凛(13)が言った。

「デート滅多に行けないんだよ〜〜〜?」
「そりゃそうだけど…」
「部活あるから…」
「つーか、即っ刻っっ謝りに行けっ! そんくらいで怒んな!!」

波音が物凄い形相で言った。

「ヤダ」

理京の即答攻撃!!

「はっ!?」

波音は100のダメージを受けた!!(?)

「美夜、マンガ見せて」

理京は席を立ち、友達の山田美夜(13)(2-2)の方に行った。美夜の将来の夢はマンガ家で、結構前からマンガを描いている。美夜は、理京にマンガを差し出した。
が、渡さなかった。マンガを描いたノートをぎゅっと握ったまま離さない。

「美夜?」

顔を上げた美夜は、キッと理京を見た。

「本当にいいの? それで…私が…貰うよ? 佐藤…」

(!? そうだった…美夜、一純の事…)

美夜と理京は2人で、一純の事が好きだったのだ。


『佐藤が今好きなのは理京だから、あげるからね!』

『貰うよ? 佐藤…』


「美夜…」

理京は口元に笑みを浮かべた。

「あげないっ!」

元気よく振り返り、笑う。

「行ってくるっ!」

そして理京は走り出した。

「おう、行って来い!」

理京を笑顔で見送った後、美夜は「この幸せ者…」と付け足した。悲しそうに、笑って。

「山田さん…」

美夜を心配したのか、美夜の友達、児玉いづる(13)(2-2)が言った。

「児玉さん…」

案の定、美夜は泣き顔でこっちを向いた。当たり前だ。自分の好きな人の彼女を、応援したのだから。辛くないはずがない。

「うわああああん」

次の瞬間、美夜は声を出して、泣いた。





タッタッタッタッ

理京は、一純のクラスを目指して、廊下を走っていた。

(あげないよ。あんな奴だけど、大好きだから)

そう、思いながら。

「あ」

丁度、こっちに向かって歩いてくる一純が見えた。

「いず…」

声をかけようとした時、一純は理京を全く気にもとめず、理京の横を通り過ぎた。

(え……)

まだ怒っているのだろうか、階段から突き落とした事(だってアレはいけないよ、うん)。
そんなに怒んなくてもいいじゃん!! と思ったのか、理京はキレた。

「バカ一純ーっっ!!」

すると、前にいた一純が『?』という顔をして振り返った。
理京は怒りに震えている。すると。

「誰がバカだって?」

(え!?)

後ろから声がした。理京が振り返るとそこには…

「一純!?」
「まだ怒ってんの?」

一純がいた。今理京の目の前には、2人の一純がいる。

「こっちにも一純、こっちにも…?」

そしてもう1度振り返った先にいたのは…

「いっいっ…一純が増殖してるー!! キショッ」

理京、自分の彼氏が増えて『キショッ』はないでしょ『キショッ』は。あ、でも確かにキショt(ry
ちなみにその数、13人。タイトルの意味、分かりました?

「はっ」

理京はその時、さっき一純を階段から突き落とした時の事を思い出した。確かあの時一純の足は…

「げっ」

3段目に当たった。=3段目から落ちた。つまりコレは…

「サン・フォルテぇぇぇぇぇぇ!!!」
「は?」

呼ばれる事は殆んどないサン・フォルテは(だってみんな存在を知らない)、空を悠々と泳いでいた(飛べる)。けどまぁ一応呼ばれたのでその人のところへ。

「何? またアンタ?」
「こ゛れ゛は゛な゛に゛ーぃ゛!!?」

理京は、13人に増えた一純を指差しながら言った。

「あら? 1人で落ちたの!?」

流石は精霊(?)、ちゃんとどの段が何かとか把握してるのね。

「これは“ニセモノ”と“ホンモノ”を見分けなきゃ…ニセモノを指差して“ニセモノ!”と叫べばいいのよ。でもホンモノに“ニセモノ”と叫ぶとホンモノが消えてしまう…最後にホンモノにキスをすれば術がとけるわ」
「てめぇ# またキスかよ# ホンット好きだなキ・ス!」

理京!! 120°くらいキャラ変わってる!!

「っていうかそんなにキスがいいならあんたがしろよ!」
「だめよ私じゃ! これは…その人の事を本当に好きな人じゃないと意味がないの!!」


理京の動きが止まった。

(本当に―――…? 本当に…好きな…)

『貰うよ…? 佐藤…』

美夜の言葉が頭をよぎる。

「? どうしたのよ? 早くやんなさい」

黙ったまま何も言わない理京に、サン・フォルテが言った。

(本当に…? だって…だってあたしは――…)


一純を本当に愛する資格なんて、何処にもないのに。


「理京?」
「…モノ…ニセモノ…?」

1人を指差しながら理京が言った。しかも、そう言った理京の目には涙が。

「何で疑問形なのよっ!! つーかなんで泣く!? もっとズバッとやっちゃいなさいよ!!」

訳が分からないといった感じでサン・フォルテが言う。

「ニセモノぉっ…!」
「ニセモノ!」
「ニセモノ」
「ニセモノ」
「ニセモノ」
「ニセモノ」
「ニセモノ」
「ニセモノ」
「ニセモノ」
「ニセモノ」
「ニセモノ」

オイ理京、オマエ手当たり次第にやってないか?

「ニッ…」

言いかけて、理京は気付いた。

「あ…もう2人だ…」
「ちょっと! それって今まで『適当』に言ってたって事!? どうなの理京!! もし本物が消えてたら…」

サン・フォルテは、オロオロしている。理京は、残った2人の一純をよく見て、答えた。

「大丈夫、ホンモノはどっちか…」

どちらかが本物である事は間違いないのだが、この2人は似過ぎている。どっちが本物なのか、彼女の理京でも分からない。

「ならいいわ。早く決めなさいよ!」

理京の考えも知らず、サン・フォルテは急かす。

「ん――…」

(一か八か…やってみるか…)


一方の一純。右側にいるのが本物の一純だった。2人にはコレといって違うところが見当たらない。どちらが本物か分からないようにする為か、偽物は本物と同じ表情で理京を見る。

(大丈夫、理京なら…)

「ホンモノは…こっち……」

そう言って理京が指差したのは…左側。偽物の一純だった。

(嘘なんで…信じてたのに…)

「ありがとう理京っオレがホンモノだって分かってくれてっ!」
「わっ;」

偽物は、本物を装って理京に飛びつく。

(信じてたのに――…)

自分が消される。そう思った時だ。

「――じゃない」

偽物を引き離した理京が言った。

「お前はニセモノだぁ!」

偽物を指差して、理京が言った。偽物が、消えた。理京は一純のもとへ走って行き、そのまま引き寄せてキスをした。

「どうして僕が本物だって…?」
「だぁ〜ってぇ〜…一純は自分のコト、『オレ』って言わないっしょ? それに…」

理京は、頬を指差した。一純の頬には、さっき理京が階段から突き落とした時の傷があった。


『ありがとうっオレがホンモノって分かってくれてっ…』

「ああ…それで」

理京は、ちゃんと彼氏の事を分かっていた。『見た目が同じなら違うのは中身だろう』。理京の『一か八か』は成功したわけだ。

キーンコーン…

丁度その時チャイムが鳴った。

「あ゛ー!! 予鈴!!」




≪2-4≫

(トイレ行こ)

まだ授業が始まるまでには間に合う。一純は廊下に出た。理京のクラス――5組は、次の授業は理科らしく、もうみんな教室にはいなかった。

(あ、理京)

一純がトイレの前まで行くと、理科室に行こうとしている理京が見えた。理京が遅いので、友達はもうみんな理科室に行ってしまったらしい。

「あー次アイツの理科かーだりぃーしかもちょー長い話とか言ってたし…し゛ぬ゛〜〜;」

理科教師の『アイツ』は、全校生徒が100%嫌いな先生だ。

「あv そうだ♪ 自習にしちゃお☆」

突然、思いついたように理京が言った。

(え…!)

一純は、その様子をこっそり見ていた。理京は理科の教科書に指で何かを描き、言った。

「理科の授業よ…自習になれっ!」

(え)

「な〜んてねっv さっレッツゴー」

そして理京は、理科室に向かって歩き始めた。

(なんだ…冗談…理京可愛いっv)

一純、彼バカ(親バカの彼氏バージョン?)丸出し。





キーンコーンカーンコーン

5時間目の授業の終わりのチャイムが鳴った。

「ふう、終わったー次数学か」

(あ)

5組の生徒達が理科室から帰ってきた。一純は試しに、5組の友達・下錦田勇希(14)に聞いてみた。

「下錦田君、理科どうだった? 今日長い話だって聞いたけど…」
「ああ。それがさぁ…」

勇希は、Vサインをしながら答えた。

「突然アイツ出張になってさ、2階に先生1人もいなくてみんな遊びまくり☆ ラッキーv」

(え)


『理科の授業よ自習になれっ!』
『突然自習になってさ』


一体どういう事!?



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