小説

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「何だよ!」
「何よ!」

佐藤一純(13)、川越理京(12)、只今階段の上でケンカ中。

「おーい、男子と女子が2人で落ちると何か起きるって言われてる13段の階段の上でケンカすんなー。どーなってもしんないよー。――って聞いてない!!」

何気に説明しちゃってるこの人は理京の悪ダチの飯根波音(12)。

「ぎゃ!?」

理京、言ってる傍からおちたぁぁぁぁ!!!(実況中継風?)

「あぶないっ!」


一純と13の階


理京を助けようとした一純も一緒に落ちてしまった。


「大…丈…夫?」

(やばっ…)

状況説明:一純、理京の上に乗っかっちゃってます。傍から見れば押し倒しちゃってる風。。。

「何すんのよ!」
「うがっ!!」

理京が顔を真っ赤にしながら手をあげると…

「ん?」

一純がついてきた。

「ん?」

試しに色んなところに手を動かしてみる。

「んん?」

やっぱり一純がついてくる。

「んんん?」

一純も手を動かしてみる。

「!!」

やっぱり理京がついてくる。

「手がくっついてるー!!」

…合掌。



キーンコーンカーンコーン
予鈴が鳴った。2人は教室にいた。

「席隣でよかったー」
「うん…」

不幸中の幸いとはこういう事だろう。もうケンカどころではない。どうにかこのまま生活していかなければならなくなったのだ。

(あ…)

そこで理京は気付いた。
理京の席は右側、一純の席は左側。くっついてしまった手は理京が左手、一純が右手。これまた不幸中の幸い。ところが1つ…

(私は右手使えるけど…佐藤は――)

すると一純は、ごく自然にシャーペンを左手で握った。

ガーン

(左!?)

「左利き…なんだ?」
「うん…つーか両利き?」

(両利きなんだ…知らなかった…こうなって気付く事って、あるんだな…)



その後。

≪休み時間≫
「行かせてよー!」
「我慢してよー」
「無茶言うなよ」

トイレの前で討論です。

≪給食≫
手は繋いだまま何とか自分で。

(こんな食べにくい食事初めてだ…!!)

≪清掃≫

「早く清掃着着ろよー! 今日ゴミ捨ての日なんだろ!?」
「分かってるよー!」


≪放課後≫

「は〜っ…」

2人ともすっかり疲れたご様子。

「川越…これから…どうしようか…」
「うん…――」

誰もいなくなった教室に、理京と一純は、いた。
夕日も沈みかけていて、あたりは少しずつ暗くなってきていた。

「とりあえず、家には帰れないよねー」


「ごめんな」


「えっ…」
「ケンカの原因作ったの僕だし…それにあの時僕が一緒に落ちなきゃこんな事にはならなかったし…」
「そっそんな…あっあたしだって、あんな事で怒って…あたしがドジって階段から落ちるし…」

お互い反省していた。これで仲直りだ。

「川越…」

一純は理京の手を握り締めた。
仲直りのしるしに…キスを。

(ごめんね…)


それは次の瞬間だった。

「!?」
「うわっ取れた!?」
「わわっどうして?」

2人の手が離れた。
あんなに離れなかったのに…

「よかったぁー」




≪次の日≫

「おはよっ。あ、手離れたんだー」

登校中に会った波音が声をかけてきた。

「そーなのっ!」
「ところで…ケンカの原因って何なの?」

波音が聞いた。

「それは…佐藤が私以外の女と歩いてたのよーーーっ!!」

一純の姉・佐藤千瀬(17)。

「だからあれは姉ちゃんだって…」
「姉ちゃんだろうと妹だろうとやなもんはやなの!!」
「妹いないし!!」
「そういう事じゃなくて…」
「もういいじゃん浮気とかじゃないんだしさー。僕が好きなのは川越だけだよw」
「そういう事こんなトコで言うなーー!! 大体『川越』なんて世の中には沢山いるわ!!(多分)」
「じゃあ理京!! 理京なら絶対1人しかいないよ!」

くすっ


もしかしたらあれは、素直になれなかった2人への、階段からの、ちょっといぢわるなプレゼントだったのかも☆



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