小説

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13歳の誕生日、近くで行われた祭りで、彼は恋をした。川越理京。3年前に向こうが転校してきてから、ずっと喧嘩していた相手だった。

それは、彼の初恋だった。


一純の13デ


ちーっす、佐藤一純です。いま12月です。そして今――

「もぉーそこの男子しずかにしてー!」


――恋の真っ最中です。

(怒られた…川越に///)




≪12月5日(金)≫
一純は自分の家の窓から外をながめていた(恋する乙女のようなところがあるんです;;)。

「ハァ…」

(ぼくじゃやっぱ…つりあわな――「ギャァァァァ――――――!!!」

(ん?)

一純は声のしたほう(空)を見た。空から何か降ってきている。

「だ―ず―げ―で――!!」

その何かは一純の真上から降ってきている。一純はたすけてと言われ、思わず手を出した。
ズドッ
何かは丁度一純の手のひらに落ちてきた。物凄い勢いだった。

「い゛っでぇ〜〜」

一純は何かが落ちてきていないほうの手を振りながら言った。手は赤くなってきていた。あまりにも痛すぎて、涙まで出てきた。

「い゛っ…」

一純が自分の手のひらに目をやるとそこには、小さな泣き顔の女の子が座っていた。髪はストレートでリボンをつけていて、一純の片手のひらに乗るサイズだ。

(誰? もしや宇宙人!? ホビット?)

一純がそんな事を考えていると、その女の子は笑った。

「ありがとうv たすかりました! 私っ実は宇宙人って奴なんですけど、スモーラー星の小人族【春羅】のリリィっていいます。途中で羽が閉じちゃって急降下し始めて、圧力で羽が開かなくて…大変でしたっあっそだっ! 何かお礼を…あっこれなんて如何です? 13デイズ☆チェンジ。13日だけ日替わりで違う自分になれますv 土日・祝日は除いてですヨw これで恋人GETな〜んてv どぞっ」

そう言ってリリィは一純に、紫色の液体の入った小瓶を差し出した。一純はそれを受け取り、不思議そうに眺めている。

「じゃ、私はこれで。あ、それ飲むんですよ!」

そう言ってリリィは羽を広げて空へ飛び立っていった。

『これで恋人GETな〜んてv』

(何か…面白そう)

一純は液体を飲み干した。





≪12月8日(月)・1日目 積極的≫
タタタタタ…

「川越ーっ!」

タタタタ…
ぴょんっ

「おはよっv」
「〜〜!! ///」

状況説明:一純、理京に飛びつきました。

(脈アリ?)


≪その後≫
≪12月9日(火)・2日目 ひかえめ≫
≪12月10日(水)・3日目 素直≫
≪12月11日(木)・4日目 積極的(2回目)≫
≪12月12日(金)・5日目 にぎやか≫
≪12月15日(月)・6日目 頼れる≫
≪12月16日(火)・7日目 冷たく≫
≪12月17日(水)・8日目 ドジ≫
≪12月18日(木)・9日目 素直(2回目)≫
≪12月19日(金)・10日目 欠席≫
≪12月22日(月)・11日目 積極的(3回目)≫
≪12月24日(水)・12日目 冷たく(2回目)≫





≪13日目≫

(佐藤今日はどうかなーこえー)

理京は恐る恐る教室を覗いた。

(あ…よかった普通だ…)

「さ―――…」

理京が話しかけようとしたその時。一純の横顔が見えた。

――13日目・弱虫。

一純の目から、涙が流れていた。

(え……)

しかしもう1度見ると、涙は流れていなかった。

(あ……気のせい…かな)



≪昼休み≫
理京の横を、一純は何も言わずに通り過ぎていった。

「佐藤っ!」

理京は意を決して話しかけた。

「佐藤さぁ、何なの!? 最近!! なんか変だよ。どうしちゃったの? 妙にくっついてきたり、冷たかったり…」
「……」

一純は、下を向いたまま、答えない。

「何よ! 何か言わないと分かんないじゃないっ!」

理京の目から、涙が次々とこぼれ落ちた。

「――ごめんっ…! ただ……ただ川越が好きなだけなんだ」

一純の目にも、涙が浮かんでいた。

「え……ちょっと泣かないでよ。男だろっ!? もぉ――――…」

理京はそう呟いて、一純にキスをした。そして、

「私の片思いだと思ってた」

と言って笑った。



――12月25日(木)クリスマス。

帰り道。2人は手をつないで歩きながら、約束した。


「ずっとこのままでいよう」




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