小説3

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変人達が集う学校、ワタクシ立アホウドリ中学校。
この学校には1学年に、1組、2組、3組、4組、5組、96組という6クラスがある。

これは、96組の変人達が繰り広げるバカみたいな物語である。


飛び出すな☆裂96組!!
1.誰だコイツら



「誰、オマエら」

新3年96組の行列の1番前にいた茶中ひろきが、新しい教室のドアを開けて言った。

「どうした? チャナ」
「なんか…変なやつらがいる」
「え?」

ひろきの後ろにいた中町たくとが中を覗く。
確かに、変なやつらがいた。
1人は巫女装束のような服を着て、両手にネギを持ち踊っている女。
1人は一見割りとまともに見えるが、下半身はタオル1枚の男。
そしてもう1人は紫のロングヘア(多分カツラ)にオーバーオールらしき服とメガネ、帽子を纏った男。
女の横のラジカセから聞こえてくるメロディは萌え系アイドルではないかと推測される。

「みっこみこにしてあげる〜♪」
「くぅぅるあぁぁあぁああぁぁ!!! ミクちゃんバカにすんなァァぅ!!」

ひろきを押し退けて、座野真駄実が教室へ入った。

「えっ座野そういうキャラなの?」

一応ひろきがツッコむ。
ネギを振って踊っていた巫女ムスメが止まる。

「ぬわんですってぇ!!? あきちの何処がミクっちをヴァカにしてるってゆうのよぉ!!?」
「なあ、あきちって何?」
「完全にしてるだろうがよォォ!! なんで両手にネギ持ってんだよ! ミクちゃんは片手じゃボケ!! しかも『みっこみこ』ってなんだよ!」

残念ながら常識的なひろきのツッコミは無視された。

「巫女装束の巫女に決まってんでしょぉ!? あきちが巫女ちゃんのカッコしてるからみっこみこなのよ!」
「だからあきちって何? 空地?」
「だからそれがバカにしてんだよォォォ!!! 何自分の格好とかけてんだよ! 一緒にすんじゃねぇよ!」
「オマエら黙れェェェェ!!!」

ことごとくツッコミを無視されるひろきに代わって、黒幕明子が座野を思い切り殴り飛ばした。そして巫女ムスメに近付いていく。

「アンタ、あたいとキャラ被ってんのよォォォ!!!」
「何処が!?」
「ぬわんですってぇぇ!!? ガキがチョーシ乗ってんじゃないわよ! それが年上に対する態度かァァ!!!」
「え、誰が年上?」
「あ゛ぁ!? 誰がガキだコルァァァ!!! ちっちぇからって舐めんなよこれでも中2じゃコルァァァ!!!」
「あっこ違う! 今日から中3!」

ツッコミを無視され続けて不貞腐れたひろきに代わり、今度は黒幕の親友である滝川菜々が後ろから黒幕を抑えた。

「かんなちん! かんなちんもケンカやめよーよー」
「!?」

紫の長髪男が巫女ムスメに近寄ると、髪の毛を逆立てていた巫女ムスメも落ち着いた。
だが黒幕、菜々、座野、ひろき、その他96組のメンバーは、紫の長髪男の口調に驚いていた。

「つーか…誰だよ、おまえら」

代表してひろきが、(今のところ)一番話が通じそうな紫の長髪男に問う。もう1人の男とは出来れば関わりたくない。
すると長髪男はニカッと笑って、

「留年生だよっ☆」

と言った。

「はあ? 留年?」
「中学で…?」
「うんっ」
「なんで中学で留年? そんなに長期間休んだワケ?」
「んーん違うよー中学園おもろいから!」
「あ、そう…」

ひろきはもう何処からツッコんだらいいか分からなかった。

「中学園ってなんだよ! 幼稚園みたいな言い方してんじゃねーよ!」

座野がツッコんでしまった。すると、

「気にしなくていいわよ」

と声がした。留年生以外の3人は巫女ムスメを見たが、巫女ムスメは「あきちじゃないし」と言って左を指差した。
巫女ムスメが指差した先にいたのは、最初に見たきり誰もが見ないようにしていた、例の下半身タオル1枚の男だ。

「師匠はコスプレが趣味なの。キャラまでなりきってるから訳が分からない時は専門用語だと思って流した方がいいわ」

タオルの男が続ける。

「これ、何のコスプレ…?」

ひろきが長髪男を指差す。タオルの男にも聞きたいことはあるが、とりあえず長髪男から片付けることにした。

「んちゃ! アラレだよ!」
「黙れ!!」
「うほほーい! はつかちんおもろい!」
「おもろくねーよ!!」

タオルと長髪が言い争い(?)を始めてしまった。
ひろきは黙って2人を見ている巫女ムスメに視線を向けた。

「語り部がめんどくせーから自己紹介しねぇ?」

え、いやそんなこと言ってないけど…

「しょうがないわね。あきちは神有月神無。神様が有る月に神様が無いって書くのよ。だから神様って呼びなさい!」
「……」
「何よ、なんか不満!?」
「不満しかねぇよ!」

先程の初歩的なミスから立ち直った黒幕が立ち上がった。

「何処が不満なのよ! 神様がいるかいないかあきちが決められるのよっ!? 神様みたいじゃない!」
「ワケわかんねーよ!! あたいは黒幕明子! 神がいるかいないかとか決められるか!!」
「黒幕途中で自己紹介すんなよ。俺は茶中ひろき」
「私は滝川菜々だよー」
「で、あそこにいるのが座野真駄実よォォォ!!」
「黒幕なんでキレてんの?」
「あっちのタオルは霜月二十日で下様! 紫のは師走野師走で師匠よ!」

3人ともおかしな名前だった。

「それ本名?」
「本名に決まってんだろバカチンがァァ!!」

殴りかかってきた巫女ムスメ――神無を、ひろきは避けられなかった。

「ぐふぉっ!!」
「ぐはっ!!」

後ろにいたたくとまで巻き添えを喰らい、2人で床に倒れた。

(うわあ……)


とりあえず、新3年96組はまだ始まってすらいない。



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