小説2
□U
1ページ/2ページ
車のライトが眩しい。
あたし、死ぬのかな…
FaKe.−フェイク−U
彰規君――…!!
ドン
−消えない記憶−
3日後。
目を開けると、病院の天井が見えた。
「ここ…」
「しずく!! よかった…目が覚めたのね…!」
すると今度は、40代後半ぐらいの女の人が視界に入ってきた。
「誰…?」
その女の人に見覚えがなかったので聞いた。
「しずく…? 何言ってるのしずく? お母さんよ!!」
「おかーさん…?」
――あれ? っていうか…
「あたし…誰?」
もしかしなくても、あたしは記憶喪失ってヤツみたいだ。
2週間後。
虹野しずくは、窓を開けてため息を吐いた。
明日からは学校だ。
事故に遭って2週間、記憶喪失になってからも2週間。
何も思い出せない。
自分がどんな事故に遭ったのかも。
「友達の事も、親の事も、自分の事も覚えてないなんてなぁ…」
その時、携帯から音楽が聞こえてきた。
多分メールの受信音だ。
しずくは携帯を手に取った。
「彰規君…?」
差出人の部分には、『彰規君』と書いてある。
しずくはメールを開いた。
“明日から学校来るんだよな? ケガもう大丈夫?
早くお前に会いたいよ。
明日からはまた一緒に帰ろうな”
「え?」
――この文面って…まさか、彼氏?? もしかして記憶喪失になった事…!? どうしよう。なんて返せば…
“うん、ケガはもう大丈夫だよ。心配してくれてありがとう。
あたしも早く会いたいな”
「これでいいかな…」
しずくは送信ボタンを押した。
翌日。
しずくが教室へ入ると沢山の人が寄ってきた。
「しずく!」
「もうケガ大丈夫なの??」
「しーちゃんのノートとっといたよ」
「記憶喪失ってホント!?」
「え、あ、あのーえっと…」
「ちょっと玖未! しーちゃん喋れないじゃん!!」
しずくは雰囲気に圧されて声を出せないでいた。
「あの…えっと、そうなの。記憶喪失…で、みんなの事覚えてないの。自己紹介してくれると助かるけど、1度には覚えられそうにないなぁ…ごめんね」
そんなしずくをクラスメイトは優しく受け入れた。
「そんな事気にしなくていいよ。しずくはしずくだもん」
「記憶もそのうち戻るよ」
「もし戻らなくても、また新しい思い出作っていけばいいじゃん?」
「みんな…ありがとう」
しずくは微笑んで言った。
「しずく!」
声がした。
しずくが振り向くと誰かがしずくに飛びついてきた。
「ひゃっ!」
「おおおおおー」
周りからは歓声が上がった。
「久しぶりしずく! 会いたかったよ!」
「ちょ、ちょっと放してよぉー」
しずくはもがく。
その誰かはやっとしずくから離れた。
「麻菜君! しずくはケガ治ったばっかなんだから飛びついちゃダメじゃん!」
「それにしずく、記憶喪失なんだよ!? いきなりそんな事されたら戸惑うでしょ!!」
「ご、ごめん…」
麻菜彰規はしずくに謝った。
「あ、いや、別に…」
しずくはしどろもどろに答える。
「コラお前ら! もうチャイム鳴ってるぞ!」
その時、先生が教室に入ってきた。
「やばっ」
みんなが席に戻っていくなか、しずくは席が分からず立ち往生していた。
すると彰規はしずくに近寄って、
「しずくの席、あそこ。今日、一緒に帰ろうな。俺部活ないから」
と言った。
「う、うん」
としずくは返事をして、彰規が指差した席に向かった。
――やっぱり…これって彼氏なのかな…
「しずく!」
放課後。
「は、はい!」
「帰ろうぜー」
彰規はしずくの手を取り、教室を出て行った。
「あっちょっと彰規君!」