小説2

□U
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車のライトが眩しい。
あたし、死ぬのかな…


FaKe.−フェイ−U


彰規君――…!!


ドン





3日後。
目を開けると、病院の天井が見えた。

「ここ…」
「しずく!! よかった…目が覚めたのね…!」

すると今度は、40代後半ぐらいの女の人が視界に入ってきた。

「誰…?」

その女の人に見覚えがなかったので聞いた。

「しずく…? 何言ってるのしずく? お母さんよ!!」
「おかーさん…?」

――あれ? っていうか…

「あたし…誰?」

もしかしなくても、あたしは記憶喪失ってヤツみたいだ。



2週間後。
虹野しずくは、窓を開けてため息を吐いた。
明日からは学校だ。

事故に遭って2週間、記憶喪失になってからも2週間。
何も思い出せない。
自分がどんな事故に遭ったのかも。

「友達の事も、親の事も、自分の事も覚えてないなんてなぁ…」

その時、携帯から音楽が聞こえてきた。
多分メールの受信音だ。
しずくは携帯を手に取った。

「彰規君…?」

差出人の部分には、『彰規君』と書いてある。
しずくはメールを開いた。

“明日から学校来るんだよな? ケガもう大丈夫?
早くお前に会いたいよ。
明日からはまた一緒に帰ろうな”

「え?」

――この文面って…まさか、彼氏?? もしかして記憶喪失になった事…!? どうしよう。なんて返せば…

“うん、ケガはもう大丈夫だよ。心配してくれてありがとう。
あたしも早く会いたいな”

「これでいいかな…」

しずくは送信ボタンを押した。



翌日。
しずくが教室へ入ると沢山の人が寄ってきた。

「しずく!」
「もうケガ大丈夫なの??」
「しーちゃんのノートとっといたよ」
「記憶喪失ってホント!?」
「え、あ、あのーえっと…」
「ちょっと玖未! しーちゃん喋れないじゃん!!」

しずくは雰囲気に圧されて声を出せないでいた。

「あの…えっと、そうなの。記憶喪失…で、みんなの事覚えてないの。自己紹介してくれると助かるけど、1度には覚えられそうにないなぁ…ごめんね」

そんなしずくをクラスメイトは優しく受け入れた。

「そんな事気にしなくていいよ。しずくはしずくだもん」
「記憶もそのうち戻るよ」
「もし戻らなくても、また新しい思い出作っていけばいいじゃん?」
「みんな…ありがとう」

しずくは微笑んで言った。


「しずく!」


声がした。
しずくが振り向くと誰かがしずくに飛びついてきた。

「ひゃっ!」
「おおおおおー」

周りからは歓声が上がった。

「久しぶりしずく! 会いたかったよ!」
「ちょ、ちょっと放してよぉー」

しずくはもがく。
その誰かはやっとしずくから離れた。

「麻菜君! しずくはケガ治ったばっかなんだから飛びついちゃダメじゃん!」
「それにしずく、記憶喪失なんだよ!? いきなりそんな事されたら戸惑うでしょ!!」
「ご、ごめん…」

麻菜彰規はしずくに謝った。

「あ、いや、別に…」

しずくはしどろもどろに答える。

「コラお前ら! もうチャイム鳴ってるぞ!」

その時、先生が教室に入ってきた。

「やばっ」

みんなが席に戻っていくなか、しずくは席が分からず立ち往生していた。
すると彰規はしずくに近寄って、

「しずくの席、あそこ。今日、一緒に帰ろうな。俺部活ないから」

と言った。

「う、うん」

としずくは返事をして、彰規が指差した席に向かった。

――やっぱり…これって彼氏なのかな…





「しずく!」

放課後。

「は、はい!」
「帰ろうぜー」

彰規はしずくの手を取り、教室を出て行った。

「あっちょっと彰規君!」




 
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