小説2

□2
1ページ/1ページ

1997年4月10日、私は市立蒼井小学校に入学した。
1年生の頃は、学校に慣れる事に一生懸命で、恋をするような暇はなかった。
それにその頃、私はクラスの一部にいじめられていた。
それを乗り越えて私は強くなり、そして逆に強くなり過ぎてしまったのだ。


緑の恋 2


2年生になり、家が近所で、幼稚園の頃からの親友、元阪悠華と同じクラスになった。
それから、毎日一緒に帰っていた。



いつ頃からだったかは覚えていない。
私は悠華だけではなく、同じくクラスメイトである川嶋秋良、砂山友希という男子2人と、計4人で帰るようになっていた。
小学校低学年の頃の話なので、何ら不思議ではない。
私はあき、とも、と呼んでいた。
そして私は、あきが好きだった。
一緒にいて楽しいと、そんな理由だった。
あの幼稚園の頃の最悪な初恋を数えないとすれば、本気で人を好きになったのは初めてで、これは私にとって本当の初恋のようなものだった。

6月に妹、遥名潤が生まれた。
6月を意味するJuneで潤。
また母と同じ付け方だった。



私とあきは仲が良く、両想いと噂されていた。
私も実は、少しだけそんな気がしていた。
私は愛情表現が苦手で、よくあきを叩いたり蹴ったりしては軽く謝ったりと、そんな日々を連ねていた。



「遥名さんってあきの事好きやろ?」

私達4人の中で、あきが1番学校に近いところに住んでいた。
あきと別れ3人になってしばらく歩いたところで、その日ともが言った。

「うん。言わんでね」

私があっさりと認めた事にともは驚いていたが、少しして頷いた。
ともは口も軽くないし、信用出来るので、私は隠す必要はないと思った。
そしてあの事件が起きる日まで、ともはちゃんと黙っていてくれた。



あの事件が起きたのは、3年生に上がる1、2ヶ月程前だった。
叩いたり蹴りを入れたり、それはいつも通り。
軽い冗談のつもりで、私はとんでもないところを蹴ってしまった。
何処だったかは言わずともお分かりだろう。
私としても、あまり自分では言いたくないので、察して頂きたい。
今でこそ笑い話となりえるが、あの時の私には本当に一大事だった。
取り返しのつかない事をしてしまったと、私は必死に謝る言葉を探していた。


先生によってあきと私は、2人廊下に出され、向かい合っていた。
勿論自分が何をしたのかも、それが悪い事だとも分かっていた。
謝るよう先生に言われて、謝らなければとも思っていて、それなのに言葉が出てくれない。
それからお互い沈黙のまま数十分が過ぎて、その後、やっとの思いで私は小さく、

「……ごめんね」

と言った。
あきも何とか頷き、先生も笑って、私はようやく緊張から解放された。
しかし頭の中では、“終わった”という言葉が渦を巻いていた。
もしそれまであきが私の事を好きだったのだとしても、これは絶対に嫌われた。
私があきをこの先も好きでいる資格なんてない。

そして私はあきを諦め、3年生になりクラスも離れて、私の2つ目の恋は終わった。


3へ


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ