小説2
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診察室のドア越しに、母さんの泣く声を聞いた。
遂にこの時がきたんだな、と思った。
ドアを思い切り開けてやった。
「聡馬…」
母さんは赤く腫らした目で僕を見る。
「言ってよ。あと何年?」
余命宣告された事くらい分かっていた。
聞かないでおくよりは、マシだと思った。
0個目の季節〜始まり〜
最期の3年間を過ごす場所に足を踏み入れた。
「3組か…」
そう呟いて、最期の3年に期待を寄せた。
けど周りがあまりに煩かったから、体育館裏へ行ってみた。
大きくて綺麗な、桜の木があった。
近付いてそっと触れてみた。
見上げるともっと綺麗で、涙が出そうになる。
「3年間、よろしくお願いします」
そこで視線に気付き、振り返った。
――ん? 何あの人。
金から黒のグラデーションの髪に深紅の瞳、きつめの顔立ち。
――気の強そうな女!!
最悪な第一印象は、最初で最後の恋の始まりだった。
end