小説2

□冬
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秀子から離れて5ヶ月が経った。現状は相変わらずだ。
そんな、ある日の昼休みだった。


1度目の〜二年後〜



「聡馬ー何? お前読書かよー」

聡馬の小学校からの親友、川村央と板倉遥が話しかけてきた。教室には、聡馬と央と遥、それから秀子がいる。

「何読んでんの? …うわっ太ッッ!! オマエこんなん読むの?」
「あぁ、うん」
「てかコレ…アイツも前読んでなかった?」

アイツ。もう誰も広瀬秀子を名前で呼ぶ人はいなくなっていた。
いじめもエスカレートして、秀子が今履いている上履きは、もう5足目だった。

「オマエ何でアイツと同じ本なんか読んでんだよ」
「…もう広瀬は読んでないじゃん。それにコレ、結構面白いんだよ」

秀子は相変わらず本を読んでいる。ただ、今はもう『スカイライン。』は読み終わったらしく、『Enemy』という本だった。
秀子は読むスピードが速く、常に本を読んでいるので、1000ページ近くある本でも10日程で読み終わる。
聡馬は読むスピードが遅く、ずっと読んでいる訳ではないので、1000ページ近くある本は4、5ヶ月かかる。
『スカイライン。』も秀子は聡馬が読み始めてすぐに読み終わったが、聡馬は3ヶ月経った今でも読んでいる。その間に秀子は100冊近く読んでいた。

「まぁどーでもいいけどさー。ちょっと来い」



央は聡馬を人のいないところに連れていった。

「オマエ、まだアイツと関わろうとか考えてんじゃねぇよな?」

央はそう切り出した。

「まさかっ…」
「誤魔化してんじゃねぇぞ。前にオマエがアイツの上履き洗ってんの見たんだからな。まだアイツの事名前で呼んでるし…アイツに関わったってイイ事なんかないのは目に見えてんじゃんか! 大体、アイツの方からオマエの事突き放したんだろ!? オマエの親切は有難迷惑だってよ! オマエが態々助けてやる必要ねぇんだよ!!」
「……分かってるよ」

聡馬は適当に答えた。

「分かってねぇよ。オマエ分かってねぇよ。誰の為に言ってると思ってんだよ!? オマエ…あと2年ちょっとなんだぞ!? もう2年後なんだぞ!? ちゃんと分かってんのかよ! アイツと一緒にいてオマエの3年間は幸せなのかよ!!」

2人の間に、沈黙が訪れた。
暫くして、聡馬は呟いた。

「………幸せだよ。少なくとも、このまま黙って見ておくよりは」
「聡馬…じゃあオマエ、アイツのトコに戻るのか? 2人だけで誰にも相手にされずに残りの2年を過ごすのか!? アイツにも嫌がられながら!?」
「……」

聡馬は喋らなかった。

「そうなったら本当に孤独なのはアイツじゃなくてオマエだぞ?」
「……そうだね」

聡馬はようやく、理解したように頷いた。

「まぁ、俺らと楽しく過ごそうぜ。それでいいだろ?」

央は聡馬の肩をポン、と叩いた。

「あぁ…」



 
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