小説3

□りんご
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※実話を元にしたフィクションです







りんご


別れの始まりは、電話だった。

『落ち着いて聞けよ――…アイツが、死んだ』
「は? お前、言っていいことと悪ぃことがあんぞ」
『こんな嘘誰が吐くかよ』
「なんでアイツが死ぬんだよ。病気じゃねぇだろ? 事故か? まさか殺された?」
『…そうだな、殺されたってのも間違いじゃない』
「誰に」
『自分だよ』
「は?」
『自殺した』
「なっ…」

なんで

なんで

『自分の部屋で、首吊って…』

違う違う違う

俺が聞きたいのはそんな事じゃない

方法じゃない

俺が聞きたいのは、理由なんだ

なんで、

なあ…なんで!!



葬式には出たけど、棺桶なんか覗きたくなかった。
最後にアイツの顔ちゃんと見て覚えててやろうと思ったけど、アイツの死んでる顔なんて、どうしても見れなかった。
火葬場の外で煙突から出る煙を見ても、アイツが死んだなんて信じられなかった。


アイツとは小学校からの付き合いだった。
そんなに思い詰めてるようにも見えなかった。
だってついこの間、一緒に遊んだばっかだったんだ。
アイツは1日中笑ってた。
だからなんかいいことでもあったのかって――…


『なんもねぇーよ!』って笑った、アイツの顔が忘れられない。


なあ、俺そんなに頼りなかったかよ。

何年付き合ってきたと思ってんだよ。

お前の事何でも分かってるつもりだった俺が馬鹿みたいじゃねぇか。

自分で死ぬほどのなんかがあったのかよ。

じゃあなんであの日笑ってたんだよ。

俺に迷惑かけたくなかったとか言うなよ?

お前に迷惑かけられるくらいなんてことねぇんだよ。

一言でも言ってくれりゃあ、いくらだって迷惑かけられてやったのに。

なんで、

なんでだよ。

俺じゃ何も出来ないかもしれないけどさ、

話ぐらい聞いてやったのに。

一緒に頭抱えて悩んでやったのに。

なんで、

そんなもんだったのかよ。俺達の友情って。

小学校から一緒だったのによ。

お前にとって俺って、

そんなもんだったのかよ。

なあ、

「なんとか言えよ…馬鹿野郎ォォォォォォォ!!!!!!」

なんでありがとうしか書いてねぇんだ、お前の遺書にはよ。

苦しかった事全部、吐いちまえばよかったのによ。

お前が死んでからも、俺お前の為に何も出来ないのかよ。

馬鹿野郎。


終わり


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