黒猫の宝箱

□幸せな時間
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フカフカした感触が僕をふんわり包んでいる
腕の中では更にふわふになマシロの感触に顔がふにゃっとする
暖かくて幸せな時間
今日は土曜日で明日も休み
布団の中でゴロゴロ出来る至福の時間
しかし何かが足りない


「ふ、にゅ…」


良く回らない頭で考えるが、瞼は残念ながら開かない
足りない…何かが足りない…
寂しくて、不安に成ってくる
足りない…
心が震える


「み、かぁどぉ…」


心が寂しくて、軋んで思わず声が出た
そうだ、隣に包み込んでくれる温もりがない
優しく髪を撫でてくれる大きな手がない


「み、か、ど?」


マシロを力一杯抱き締めてシーツに丸まる
やっぱりシーツは自分の温もりしかしない
帝の声がしない…
低いんだけど穏やかで、優しさに溢れた声が名前を呼んでくれない
寂しくて涙が溢れてくる


「み、がど…みか、ど…帝」


目を開けたら居るだろうか
居なかったらどうしよう…
皇を失った時を思い出す
比べモノに成らないくらい苦しい
目を開けるのが怖いよ…

マシロが腕に力を入れ過ぎて、形が変形しだしている
目をきゅっと力を入れて瞑る


「どうした…渚?」
ふと、大きな手が頬を掠めて頭を撫でる
望んだ声が、温もりが僕を優しく包み込んでくれる
耐えられなくて、目を開けて少し上にある帝を見詰める
帝は優しく僕を見つめている


「み、かぁどぉ…行っちゃやぁ」


安心したら、涙がポロポロ零れる
手をマシロから離し、帝にしがみつく


「置いてかにゃいで!!」


必死にぎゅうぎゅう抱きつく
帝と僕の間でマシロが潰れてるけど、帝を離したくないからごめんね
帝は少し驚いたのか、頭を撫でる手が一瞬止まった


「渚、急にどうしたんだ?本当に」

「帝が居ないの」

「あ、悪い…珈琲飲んでたんだ」


よくよくすり寄って匂いを嗅ぐと、緩やかに珈琲の匂いがする
すると体から力が抜け始める


「みかど…」

「俺は、何があってもお前を置いていかないよ?渚が嫌がってももう離してやるつもりもない」


帝が片手で神を撫でながら、もう片方の手でゆっくり抱き締めてくれた


「一人にして悪かった…もう大丈夫だから、渚」

「うにゅ…」


小さく頷いた僕に、帝は面白い位に笑う
どうしてか分からくてムッとしたけど、僕は幸せだから許す事にした

もう、帝を失うなんて考えられないんだ
帝に抱き締められながら僕は安心して、また瞳を閉じた


「おやすみ、渚」


愛しい人の声を聞きながら…
僕は幸せに包まれたのだ
 

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