黒猫の宝箱

□二章 初めの一歩
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えっと、此処はドコ?
いや、学園らしいのは分かってる
だけど、ここ某ネズミの夢の国みたいじゃないか!!
しかも、今理事長室に向かっているのだがみんな二人を見ては頬を染めてるんですけど!!
確かに帝も、八重都さんも格好いいけど男子校で「キャッ」とか「キャー」とかどうなの?
しかも、僕に向ける視線は嫉妬や嫌悪ばかり…いくら、皇で馴れててもやっぱり嫌だ
自然に俯き猫背になっていく


「前向いて、堂々としてろ渚。何かする奴はちゃんと潰してやるから」


不意に、あの大きな手で僕の頭を撫でながら帝が言った
励ましが嬉しいが、後半は殆ど物騒だ


「本当だよ、渚ちゃん。色々言ってくる奴は………ね?」


その間は何ですか!!
一体何ですか、怖いですよ!!
僕はみんなを守るために前を向いて歩くことにした




「絶対にこの部屋ですよね」


歩いて行くと一際大きい扉に着いた
間違いない、ここが理事長室に決まってる
自信満々に尋ねた僕に、帝は静かに首を振った


「その隣の扉が、理事長室だ」


ウソだ!!だって隣は普通の扉だよ!!
理事長室って学校で一倍凄い所じゃないんですか!!


「渚は早とちりだな…ほら、行くぞ」


余りのことに呆然としてると、帝は苦笑いしながら扉を開いた


扉の向こうは更なる夢の国でした
赤絨毯ってどうなの…どんだけ凄いのこの学園


「あれが理事長だよ」


そして突っ込むことに疲れてきた僕に八重都さんが指差した方には、窓際に佇む一人の男性が居た
光にとけ込むような金髪に、空を切り抜いたような蒼い瞳
どっかに見たような…
あれ?どっかで見たような…
見ただけじゃなくて、何度も会話したことがある気が…


「て、ハンプティ・ダンプティ!!」


「やぁ、黒猫久し振り」


輝かしい王子スマイルの彼を僕は知っている
普段は「BAR Alice」で会う人物だ
「Dragon」と「Pandora」は今は敵対しているが、元を辿れば一つのチームだったんだ
そのチームが「Alice」で、初代総長がこの人だとも噂されている
ダンプティは、知らないことが無いんじゃないかと思うほどの情報収集能力があり、現役を退いた今でもその力は健在だ
僕自身も、たまに情報を売って貰っていた
それなりに、色々と長い付き合いだ


「元気そうで安心したよ。心配していたんだよ?」

「え、うん…ごめん、って何で理事長!?」

「私の本職はこの学園の運営なんだよ、黒猫」

「だって、ダンプティはいつもAliceに居るのに」

「うん。だってAliceには時計屋が居るからね」


混乱する僕の質問にダンプティはしっかり答えてくれる
帝と八重都さんは、僕たちのやりとりに驚たらしくて仲良く固まっている


「取りあえず、ようこそ黒猫。私の学園へ…よく迷い込んできてくれた」


ダンプティは僕に向けて笑いながら両腕を広げた
ここからがスタート
僕はしらずしらずのうちに汗ばんだ両手を、しっかり握りしめた






――迷い込んだ黒猫さん。君はいったい何の夢を見る?
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