新甲陽軍鑑
□二章 信濃侵攻
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国内を統一した晴信は信濃へ目を向けた。
信濃には守護職としては小笠原氏が存在しているが、その支配力は信濃全域には及んでいない。他に諏訪氏、村上氏らが勢力を張っている。
諏訪氏には当主の頼重に晴信の妹が嫁いでおり、同盟関係を築いている。
諏訪氏は諏訪明神の神家であるが、内紛の芽を抱えていた。諏訪の一族である高遠頼次が諏訪神家の頭領の座を狙っているのだ。
晴信は同盟関係にある諏訪を攻めるつもりでいた。
同盟関係にある諏訪家を攻める事は信義に反する行為である。
晴信は慎重だった。
晴信のこの計画を知らされたのは武田の筆頭家老である両織、板垣信方と甘利虎泰だけであった。
晴信はまず密かに高遠に援助を約束し、諏訪領に侵攻するように仕向けた。
高遠の反応は予期していた通り、諏訪侵攻に乗り気であった。
高遠頼次は晴信の真の目的には気付いてはいない。自分が罠にはめられようとは夢にも思っていなかった。