新甲陽軍鑑
□一章 クーデター
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六月、信虎が駿河の今川に嫁いだ娘に会いに、出かけて行った。
「今が好機ですぞ。」
信虎を見送った後、板垣が小声で耳打ちした。
ついに時が来た。
晴信はすぐに動いた。
まず信虎に従って行った者たちの妻子を人質に取った。
さらに今川の当主、義元とは事前に密約が交してある。
義元からすれば信虎よりも若い晴信のほうが扱いやすいと考えたのだろう。
とにかく信虎は孤立無援であった。
信虎は駿河で久しぶりに娘と会い、また婿にも歓待され気分良く帰途についた。
しかし信虎は甲斐には帰れなかった。
国境まで来ると自分の配下達によって関門は封鎖されていた。
信虎は配下達に槍を向けられ、何が起こったのか分からなかった。
しかし櫓の上に可愛がっていた、飯富虎昌が姿を見せた。
信虎はようやく悟った。
もう自分は甲斐の土を踏む事はできないのだ、と。
信虎についていた兵はみな降伏し、信虎を見捨てた。
信虎は寂しく今川の兵達に連れられ去っていった。