気まぐれ

□抱き枕
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「楓くん、布団敷いてくれてありがとー。」
「…うす。」


彼女は流川の家へ泊まりに来ていた。


来客用の布団を、流川は自分の布団の隣に敷いた。



「眠くなってきたー…ね。」
「……。」
「寝よっかー。」
「うす。」


電気を消して布団に入る2人。





 …もぞ……

「…ぅ?楓くんどうしたのー?」
「………。」


自分用に敷かれた布団に入ったはずの流川がのそのそと彼女の布団に入ってきた。

そして彼女を包み込むように抱きしめる。


「寒いー?」
「ちげー。」


流川の行動の意味がわからず疑問符を浮かべる。


「??」
「…。…抱き枕。」
「抱き枕ー?」


ぽつりと呟いた流川。


「抱き枕欲しいの?」
「……。」


なにも言わなかったが微か動いた気配がしたので、彼女は流川が肯定で頷いたのがわかった。


「楓くん抱き枕持ってないよね?明日買いに行こうかっ。」
「………。」


いい抱き枕見つかるといいねと彼女はウキウキする。



「……………。」
「…すー…、」
「……寝たか?」
「すー…。」
「…。」





抱き枕なんかどうでもよかった。


本当はただ彼女を抱きしめたかっただけの流川。


だけど彼女にそれは伝わらず、想定外の方向に話は行ってしまった。


しかし流川には本意を言う上手い言葉も浮かばず、ため息を吐くだけだった。



いい抱き枕



流川にとって"いい抱き枕"は彼女だけ



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100413*葉月


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