気まぐれ

□キス
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今日はすごく久しぶりに仙道くんと会った。

学校も違うからなかなか会えなくて。


仙道くんが部活で忙しいのもわかってる。

無理させたくないから「会いたい」って言えないし、電話もメールも控えていた。


そんな日々がどれだけか続いたある日、仙道くんから「会おう」って言ってもらえた。

すっごく嬉しくて思いきりおしゃれをした。



久しぶりだからのんびりしたいというあたしの希望で、仙道くんのおうちでまったりデート。

いっぱいお話をしていっぱいお話を聞いて、お昼は2人で作って食べた。



そして気がついたら、部屋が夕日でオレンジ色になっていた。

綺麗な夕日を見て寂しくなった。

暗くなるから帰らなくちゃいけない。

もっと仙道くんと居たいのに…。



「……帰らなくっちゃ…。」
「…うん。」


あたしのお父さんもお母さんも仙道くんを知っている。

帰るのが遅くなって、仙道くんのこと悪く思われちゃうのは絶対に嫌。


まだここに2人でいたいけど、あたしは玄関に向かう。


「送るよ。」
「ありがとう。」


悪いなぁって思うけど、まだ一緒に居られることが嬉しくて素直に甘えてしまう。





「仙道くん、そっちじゃなくて真っすぐ行こ?」
「え、なんで?」


だってね、そっちは近道だもん。

人通りは少ないから2人きりだけど、早く家に着いてしまう。


仙道くんは「わかった」と言ってくれて、その十字路は左じゃなくて真っすぐ行く。



ざわざわ……


実はこの遠回りの道は駅が近くて人通りも車通りも結構激しい。


長く仙道くんと居られるのは嬉しいけど、ほかの人もいっぱい居る。


2人きりになれるあの道のほうがよかったかな?って思うけど、

やっぱり出来るだけ長く仙道くんと手を繋いでいたかった。




「…もうすぐ着いちゃう。」


遠回りをしても、歩くのをちょっとゆっくりにしても、

たった数分しか変わらずに家に着いてしまう。


「送ってくれてありがとう。」
「ううん。」


門の前で仙道くんとバイバイ。


離さなくちゃいけない繋いだ手。


離したくない…。


思わずギュッと力を込めて握ってしまう。


この手を離したら仙道くんは帰っちゃう。

また忙しい日々が始まって、次にいつ会えるかなんてわからない。

そう考えると涙が出てきそうになってあたしは下を向く。

そんなことして隠したって、仙道くんにはあたしが泣きそうなのお見通しだろうけど。


ばかだなぁ…。

こんなことしたって仙道くんを困らせるだけなのに。




「…顔上げて?」
「………、」


そう言われて、数秒遅れで顔を上げると……、


くちびるに なにか触れた。


それが仙道くんの唇だって理解するのに時間がかかった。


あたし、仙道くんにキスされたんだ…。



「これで寂しくない…?」
「……ん。」


本当はまだ寂しいよ。


だけど仙道くんからのキスはすごく嬉しくて、その嬉しさで寂しさを埋める。


あたしは仙道くんの手を離した。

その手に風が当たりヒヤリとする。


「家着いたらメールするから。」
「うん。」


そして仙道くんは、さっき2人で来た道を戻っていった。


見えなくなるまで、あたしは仙道くんの背中を見つめていました。


別れを惜しんだ
ファーストキス




セカンドキスは、次会ったときに



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「2人きりの近道」と「人いっぱいの遠回り」という部分、ずっと書きたかったのです。


100228*葉月


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