気まぐれ

□綺麗で格好よくて
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「…………。」


き、来ちゃった。本当に。



来たはいいけど、神くんに話しかけるのもおかしい気がするし。

用があるわけじゃないから「何しに来たの?」ってなるし。
(ただ神くんの練習するとこ見たくて。…なんて言えない。)

ちょーっと見れればいいんだけど、これって覗き?


「……。」


い、いいよね。ちょっと見るだけだもん。

意味はないよ。
ストーカーじゃないし。
見てなにかするわけじゃないし。




……そぉっ、


半分開いている扉を見つけてそこから見ることにした。



「(…わぁ。)」


神くんは既に制服から動きやすい服装に着替えていて、ボールもいくつか転がっていた。


あ、神くんボール構えてるけど…
あんな遠いところから?

入るのかな?

入ったら超人じゃないかと思った。


「(あ、打った!)」


無駄のない綺麗なシュートフォーム。

バスケのシュートなんて見たことないから他の人のは分からないけど、
神くんのシュートフォームは綺麗だと思った。


すごい、シュートだけで魅了されちゃったよ。



シュパッ…


神くんに見とれていてボールの行方は見ていなかったけど、今の音でシュートできんだとわかった。



「…。」


すごいなぁ。

うん「すごい」としか言えないなぁ。


すごい、神くん。


あんなにリングとの距離があるのにシュートできちゃうんだもん。すっごいよ。



あたしが感動している間も神くんはシュートを続けている。
さっきから1回も外していない。




「…!」


き、気付いちゃった。


神くんのシュートする姿を見ていたけど、表情までは見ていなかった。


ふっと見た神くんの顔は、
神くんの真剣な表情は、

シュートフォームに負けないくらい綺麗で、

なにより格好よかったんだ。



「(ど、どうしよう。ドキドキする。)」


神くんってこんなに格好よかった?



さっきまではシュートフォームが綺麗って見とれていたけれど、

いまは神くんが格好よくて見とれちゃう。



綺麗で格好よくて
(心臓がうるさいよ。手も熱くなってきた。顔も熱くなってきた。)



これ以上見ていられなくて、
あたしは急いで体育館を離れ、自分の家まで走って帰りました。



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100113*葉月


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