気まぐれ

□メロンパン
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「……パン。」
「へ?」


携帯を机に置いてかばんの中を整理していたときに、

隣の席の流川くんが唐突になにか呟いた。

珍しい、滅多に喋らないのに。


「パン、」
「…ぱん?」


「パン」ってあの食べ物のパン?

訳がわからずノート片手にかたまるあたし。


流川くんの目線を辿ってみると、そこにはあたしの携帯。

…あ。


「可愛いでしょ?友達がくれたんだ。」


流川くんは、きっとこのストラップのことを言ったんだと思う。

友達がお揃いでくれたメロンパンのストラップ。


「食えんのか?」
「いや、流川くんこれストラップ!つくり物だから。」


確かに立体的だし表面もメロンパンそっくりだけど。


「でもね、いいにおいするんだよー。」


ほら、と流川くんにストラップを渡す。

メロンパンのにおいじゃないけど、バニラみたいな甘くていい香りがするんだ。


「……。」
「…!」
「……甘ぇ。」


なぜ受け取らずに直接鼻を近づけてくるのかな、流川くん?

いつものように表情そのままで、率直な香りの感想を言う流川くんだけど、

あたしはちょっとびっくりしちゃって反応できなかったよ。



「それからね、これゴムかなんかで出来てて触り心地が気持ちいんだよっ。」


たいした意味はないけど、あたしはこのストラップの良いところを言って流川くんに自慢する。

友達がくれたものって、なんとなく誰かに自慢したくなる。


「はい。ほら、ふにふにー。」
「……。」


今度こそストラップを受け取った流川くん。


「………。」
「………。」

ふにふにふに……、



無言でメロンパンストラップをふにふにと触り続ける流川くんが、

なぜか可愛く見えました。


ふにふにメロンパン
(男の子を「可愛い」って思うことって本当にあるんだ!)



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100108*葉月


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