気まぐれ

□ツナ先生の朝。
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医者っていう仕事がこんなに忙しいなんて知らなかった。

毎日バタバタしてて休む暇なんてほとんど無いようなもん。

要領の悪い俺は更に大変で…。


でも案外疲れを感じない。

それはやっぱり彼女のお陰だろう。




ガラ…


俺はとある病室の扉を開ける。

ここは個室で、1人の女の子が入院中。

俺は彼女の主治医。



「……。やっぱりまだ寝てたか…。」


今の時刻は7時50分。

朝食は8時からだから、そろそろ彼女を起こしてあげなきゃね。


「おはよう。朝だよー。」
「……んぅ…、…………。」
「…………。」


彼女の肩を優しく揺すってみたけど…、駄目だ、起きない…。

少し寝返りを打っただけで目を開ける気配は全くない。


「ほら、朝だよ。起きて。」
「……ん、…。」


今度は強めに揺すってみたら彼女はゆっくり目を開けて俺を見る。


「…おはよう。」
「ん、ツナ先生おはよ、……。」
「…って、目閉じないのっ。」


おはようって挨拶したのにまた寝ようとする彼女を慌てて止める。


「……まだ眠ーい…」
「もうすぐ朝ご飯だから。」
「……ん。」


朝ご飯という言葉に反応して起き上がる彼女。

まだ眠そうに目を擦ってるけど、だいぶ目は冴えてきたみたい。


「もう少ししたら朝ご飯持ってくるから、それまでに顔洗ったりしといてね。」
「……ぷっ。」
「…?」


そう言ったら、何故か彼女に笑われた。


理由が分からなくて不思議そうな顔をする俺に彼女はまた笑い出す。


「だって、ツナ先生ったらなんかお母さんみたいなんだもん!」
「……。」


満面の笑顔で答える彼女。


「(……せめてお父さんにしてほしい…。)」


俺は小さく溜め息を吐き病室を出ることにした。



「じゃあ、また来るね。」


まだくすくすと笑い続ける彼女にそう一言掛けて病室を出た。


バタン。


「朝ご飯早くしてねーーっ!!」
「……。」


ドアを閉めたのにはっきりと聞こえる彼女の声。


「(どんだけ大きい声出してんだよ…。)」


ドアのガラス窓から病室の中を見ると、彼女は手を振ってにこにこと笑っていた。


ここは病院だから大声出すなって言うべきなのかもしれないんだけど…。


「(…まぁいっか。)」




今日も朝から彼女は元気。


元気な彼女は俺の元気の元。


今日も良い日になりそうだ。




ツナ先生の朝。
(病人のはずなのに元気いっぱいの彼女。)




baton*【REBORN】病院バトン 〜彼は主治医編〜


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