雑記
□無慈悲なる采配の日々
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「床板ーつるつるーになーれーごしごしごしっ♪まだまだぁ!ピカピカになるまでーごっしごしー♪イェーイ!!」
ホロウバスティオンの城の一室に、愉快な歌声が響いていた。
踊るように部屋をマイモップで掃除している、ピエロの様な風体をしている清掃員が一人。
「誰かが滑って転んでもー♪頭を打ってー砕けてもー♪…………………て、んん?」
ぶわぁ、と突然変な黒いもやもやが床から現れた。人が楽に入れそうな大きさだ。
「なーにこれ!!」
清掃員は持っていたモップを手に近付いて見る。
闇へ続いてそーなやつだなー
なんでこんなとこに?
何故かいっこうに消える気配の無い黒いもやもや。
清掃員はめんどくさいので、無視しようと踵を返し掃除に戻ろうと振り返ると、
「うわ、なんか出た!!」
同じく床から奇妙な白い生物が現れた。うねうねと動き、こちらの様子を窺っている様にも見える。
「なーんだよ!!掃除出来ないだろー!!邪魔ー!!うねうねしてて気持ち悪いー。何コイツらー。」
モップをぶぉん、と振り回して追い払おうとしてみたが、うねうねした動きで全くといっていいほど当たらない。
しかも、反撃をしてきて避けようとしたら――…
スルッ……
「う、わっ!!」
後ろにあった黒いもやもやに突っ込んでしまった。
急降下する感覚。
つかの間の浮遊感。
そして着地は見事失敗。尻をおもいっきり打ち付けてしまった。
「痛ー、痛ぃー、お尻打ち付けて痛いんだYO!尾底骨粉砕事件勃発かもぉーしれないZEぇぇえい!!」
とか叫びながらも、全身をバネのようにして跳ね起き、立ち上がる。
モップはしっかり背中に背負い、辺りを見回してみる。
「あー、何処だここー。もしかしたらレオンちゃんの秘密基地とかー!ありえなーい!!闇の力充満してるもーんねぇぇー!って言うか憎むべきはあの白キモだよねー、なんか爪楊枝みたいな手足しちゃってさー!噛まれたいの!?なーんちゃって!!ひゃはは!!」
そんな関係の無い独り言を言っていたが、向こう側から変な気配を感じて笑うのを止めた。
またあの白キモだったらどーしよっかなー、噛もうかなー、白いからミルク味!なんつって!!
……全然違った。
黒コートを着た二人組だ。見かけは人間っぽい。
「へぇぇぇーーいぃ!!そこの黒いコート着た人っ!!僕にここが何処だか教えてくんないかなー!親切に頼むんだよぷりーず!!」
叫んでみると、こちらに気付いたのか早足で寄って来てくれた。
茶髪のごつい巨漢と、ブルーグレイの髪のひょろい奴。お揃いの黒コートを着ている。
「なんで人間がここにいるんだ……?」
茶髪の方が至極不可思議そうな顔をして呟いた。
「黒いもやもやが出て来て、白いうねうねしたやつにしてやられたんだよー。ねぇ此処何処か教えてくんなーい?僕帰ってお掃除しなきゃなんだけどーっていうか、君達お揃いのコート着てるとか仲良しこよしですかー!ヘイ、ベストフレンズ!みたいなっ!!でも男同士がお揃いのコートなんて気持ち悪いー。ぷらとにっくらぁぁう゛ぅぅっ!!ドキ☆禁断の黒ばr」
「煩いですよ。」
「………」
ひょろい奴に一蹴された。
「どうする、ゼクシオン。」
「若干煩いですが…いい拾い物かもしれません。確かサイクスが雑用係を欲しがってましたし。」
「勝手に話進めないでー!拾い物って言うか人を物扱いしちゃ駄目なんだよーママに習わなかったのか君ィ!」
「城に連れていくのか?」
「使えなかったらまた捨てればいいじゃないですか。」
「なんか物騒な言葉聞こえたのは空耳アワーですか!?つか無視するなよー!!」
「じゃ、レクセウス頼みます。」
そう言うと、茶髪がひょいと清掃員を小脇に抱えた。
完璧に荷物扱いだ。
「オイヨ!!なにすんだー!!僕を煮込んでもたいしたダシにならないんだからなーむしろ腐敗するぞ!醗酵に失敗してカビが胞子撒き散らすんだぜーうわキッタネー。」
「……煩いですよ。」
また一蹴された。
しかも睨まれたので、大人しくすることにした。