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□愛と死を乞う
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暗い部屋の中で、ずっと貴方を想っていた。
頭の中で、彼と過ごした日々を何度も繰り返す。愛し愛された幸福な時間――…
今、目に映る景色とは正反対。
フリオニールの恋人だからと、皇帝は私を誘拐して監禁した。
彼を傷付けるために、私を傷付けた。勿論、抵抗した。しかしそんなものは皇帝を煽るだけだった。
きっと私は気が狂っていた。
喉が裂けるほど彼の名を呼んだ。涸れるまで涙を流した。
それでも彼に会える希望を失いたくなくて、生き続けていた。
フリオニール、会いたいです。
その時、暗い部屋の中に漆黒の羽が舞った。
「誰ですか…」
「…あなたのおかげで計画が狂いそうなのよ。」
ああ、アルティミシア、貴女でしたか。スコールの宿敵。私の敵。
「皇帝があなたに執心しているから、うまく利用出来ないの。」
「此処から出してくれますか…」
「いいえ。あなたを出したのが私だと知れてしまうわ。」
出れないのですね…
もうフリオニールには会えないんですね。
「――…では、」
ならばもう、心だけでも彼の傍に行くことにしよう。
「私に死をお与え下さい。」
両手を目の前の彼女に伸ばした。アルティミシアは目を伏せたあと、軽く頷いてその手に短剣を渡した。
「…あなたは強い娘だったのね。」
「いいえ、私を強くしたのはフリオニールの愛です。…ありがとうアルティミシア、最後に貴女に感謝します。」
頭を下げて礼をすれば、彼女は薄く哀しそうに笑って現れた時と同じ様に去った。
フリオニール、
今貴方のところに行きます。
こんな事なら恥ずかしがらずにもっと好きだって言えばよかった…
流した血を真っ赤な野薔薇に変えて、貴方の元に届けるから。
待ってて…
今―…行くから――…
愛と死を乞う
(魂は暗い檻を抜けて愛しい人の元へ)
(血の様に赤い薔薇が咲く)
END