短編小説
□“むかし”と“いま”
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だけど、その時間はもう過去の事。
今は、ほら…
「何してんだよ?」
彼が、仲間がいる。
「およ?
寝てたんでないの、ユーリ?」
「目が醒めた。」
「ありゃあ、ごめんねぇ。」
いつものように、笑いながらヘラッと返せば、ユーリは小さくため息で答えた。
しばらく、二人は黙る。
でも、その沈黙は二人にとって、不快なものではなかった。
ユーリはレイヴンを後ろから、抱きしめる。
ほら、心配してくれる君がいる。
そのまま、背中から暖かな体温を感じていたい。
そう、思える自分をレイヴンは自覚する。
「こんな時間にどうしたよ?」
耳元から聞こえる声に、くすぐったそうに首をすくめて。
レイヴンは、ユーリに言葉を返す。
「とっても懐かしい夢、見ただけよ。
」
「懐かしい?」
「そうよ。
ただ、懐かしいだけの、夢。」
「そうか。」
レイヴンの言葉を聞いたユーリは、無意識に腕の力を入れる。
レイヴンはそれに応えるように、自分の手をユーリの腕に添える。
「でもね、ユーリ。
それは懐かしいだけで、今じゃない。
楽しかったけど、ここにはないのよ?」
*