短編小説
□“むかし”と“いま”
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久しぶりに宿屋に泊まった夜。
なんとなく眠れなくて、レイヴンはそっと部屋から抜け出した。
草木も眠る丑三つ時とはよく言ったもので。
深夜であるこの時間には、虫の声一つ聞こえない。
そんな中でレイヴンは、先ほど少しだけ見た夢を思い出した。
それは夢いう名の記憶。
自分の意思では生きておらず、ただ従うだけの生。
しかし、レイヴンが見たのはその前だった。
変わってしまう前の“彼”との時間。
それは決して良い事だけではなかったけれど。
それでも、充実していたと思える時間。
そんな夢だった。
*