長編小説
□差し出されたのは…3
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「帰ってこないね、二人とも。」
約束の夕刻を過ぎて日が落ちきっても、すがたを現さない二人。
ユーリ、レイヴンを抜いた全員が宿屋にそろっていた。
しかし、その場にいる全員の表情は暗い。
帰ってきているべき、ユーリとレイヴンがまだ帰ってきていない。
本当なら、皆がそろっているべき時間。
宿屋のテーブルに座っているメンバーはカロル、ジュディス、エステル、リタ。
ラピードは表に座っている。
いまだ、二人が帰ってくる気配は無い。
ユーリはもちろん、レイヴンも時間に関してはルーズではない。
普段の態度からは想像できないほど、時間はきっちりと守る。
それがわかっているから、皆が不安を隠せない。
いつまでも帰ってこない二人を迎えに行くと、カロルとエスをテルが腰を上げようとしたそのとき。
表のラピードが一回だけ吠えた。
それと同時に今まで姿を見せなかったユーリが、宿屋の扉を開いた。
「悪い、遅くなった。」
「ユーリ!!!」
でも…
「ねぇ、レイヴンは?」
帰ってきたのは、ユーリ一人。
いつもユーリの後ろにいるはずのもう一人が、宿屋の中に入ってこない。
一緒にいるはずのレイヴンの姿がどこにも無かった。
*