◆story◆
□【sweetest crime 中】
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いつものように着替えの遅い三橋は、ドアのすぐ横の壁にもたれている阿部に謝りながら、いそいそと帰宅の準備をしていた。
同年にしては幾分か小さなその背中を見つめながら、阿部は意を決して重い口をひらいた。
「なぁ、俺なんかしたか?」
「し、してないっ!」
「じゃあ何で避けるんだよ」
「さ、ささ、さけ て ないよっ」
(…避けてんだな。)
嘘と分かっていながら心中に留めておくのは、もちろんこれ以上話をややこしくしないためだ。
それに三橋が阿部を故意的に避けているのは今の三橋の態度で明白だし、阿部はそれがはっきりしただけで満足だった。
それならば質問を変えて別のところから攻めるのみだ。
「お前、俺のこと嫌い?」
「……!!」
好き、と三橋は言うだろう。
阿部は確信していた。
三橋はいつだって阿部のことを讃えるように褒めちぎり、阿部がいなければ自分の価値がなくなると恥ずかしげもなく阿部に言い続けてきた。
三星戦の前にははっきりと好きだとも言っていた。
――しかし。
(え…)