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□これだから目が離せない
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最近、コイツと恋人という関係になってわかったことがある。
コイツは朝が苦手だ。
ではなぜ今までは起きれていたのかと問うと、気を張ってたんだよと拗ねたような口調で言われた。じゃあ今は違うのかと言うと顔を赤くして悪いかよと言ったコイツを抱きしめた記憶は新しい。
この事を知ってからコイツを起こすことが俺の日課になっていた。

「起きろ、音無」
「んー…」

ゆさゆさと音無の身体を揺すって起こすが、瞼がピクリと動き、一度唸るだけでコイツはなかなか起きない。
俺は布団を捲り音無を抱き起こす。

「起きろ、音無」
「んー…」

やっと瞼をあげた音無は目を擦りながら俺を見て、はようと言ってほわりと笑った。
…その音無の後ろに花が見えたのは気のせいだ。

「…さっさと顔洗ってこい」

一度頭を撫でてやると、こくりと頷いた音無はふらふらと覚束ない足取りで洗面所へと向かった、かと思うと壁にぶつかりそうになっていた。

「ま、待て待て音無!」

俺は慌てて音無に駆け寄って後ろから抱き込んだ。

「んー、のだぁ?なに?」

呑気に問うてくる音無に俺は思わず溜め息が出た。
俺はとりあえず音無の背中を押して洗面所へと連れて行く。

「ちゃんと顔洗えよ」
「うん」

俺も着替えるかと部屋へ戻ろうとしたが、心配になって洗面所へ戻るとやはりというかなんというか、音無は床に座り込んで寝ていた。顔が濡れているところからすると、洗っている途中で力尽きたのだろう。
俺は手近にあったタオルで音無の顔を拭き、もう一度起こす。

「起きろ音無、着替えるぞ」

のろのろと立ち上がった音無の背中をまた押して部屋へと戻る。
壁にかかっている音無の制服を取り、音無に渡す。
受け取って着替え始めた音無を確認して俺も着替えを始めようとしたが、どう見ても寝そうになっている音無の着替えを手伝うことにした。

「ほらちゃんと腕を通せ」
「ん、」

ボタンもネクタイも締めすべて着替えさせてから俺もやっと着替えを始めた。
着替え終わって音無を見ると、ベッドに座ったまま寝ていた。これは最早寝起きが悪いとかいうレベルではないな。
はぁ、と短く溜め息を漏らすも、俺は不思議とこれをめんどくさいと思ったことはなかった。むしろ微笑ましいというか何というか、仕方がないなと思えてくるのだ。

「…って俺は一体何を考えているのだ」

一度頭を振り思考を散らす。
俺は音無の肩を揺らして音無を起こす。三度目ともあって、今度はすんなりと起きた。

「行くぞ、音無」
「んー」

俺が手を差し伸べると、音無は俺の手を掴み立ち上がる。
俺は手を繋いだまま部屋を出て校長室へと向かった。


これだから目が離せない


(お前ら朝からイチャつくなよ)
(なっ…だ、誰が…!)
(その状態で否定されても説得力ねぇぞ)
(…ぐ)


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