Angel Beats!

□それがまるで自然体であるかのように
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現在、俺の目の前のソファーには野田と、野田の足の間に座っている音無がいた。
俺は目の前の二人を見据えると、はぁ、短く溜め息をもらす。

「お前らいい加減離れろよ」

俺が二人に向かってそう言うと、野田は音無の身体に回した片腕に力を入れ、更に密着した。

「貴様にそんな事を言われる筋合いはない」

俺はまた短く溜め息を漏らし音無を見ると、音無は野田に身体を預け、終始ニコニコと幸せそうに微笑んでいた。
あ、可愛い。マジで天使みてぇ、と思っていると、突然野田にハルバードを首元に突きつけられた。

「待て待て待て、何だこれは…!」
「貴様、セクハラだぞ」
「え、何が?」
「今の貴様の顔が、だ」
「意味わかんねぇよ」

つか現在進行形でセクハラまがいのことしてるお前に言われたくねぇよ、とは言わなかった。
俺だって命が惜しい…いや、死んでも死なねぇけどな。
しっかし、よく音無も笑ってられんなぁ…俺がもし女だったとしても絶対耐えられねぇ、つか想像したくもねぇ…!
自分の思考に自己嫌悪に陥っていると、更に野田にハルバードを突きつけられた。何故だ。

「貴様、今何を考えていた」
「べ、別に何も」
「オイ、野田。それ、いい加減降ろしてやれよ」

音無がぺしぺしと野田の腕を軽く叩きながらハルバードを降ろすように野田に言う。
あー優しいなぁ音無は。野田とは大違――

「――いってぇ…!」
「おい、野田、お前何やってんだよっ」
「ふん」

やっとハルバードを退かされた首元に手を当てて見ると、微かに手に血がついた。

「大丈夫か、日向?」

音無が心配そうな顔をし、こっちに来ようとしてくれたが、野田の腕によって立ち上がれずにいた。

「野田、離し――」
「貴様は、」
「ん?」
「貴様は、俺よりもこいつを選ぶのか?」

はぁ?何言ってんだこいつ。独占欲強いのにも程があるだろ…。

「そんなわけないだろっ」

と言って、音無は身体を捻り野田に抱きつく。

「俺が好きなのは野田で、一番大切なのも野田だよ!」
「音無…」

野田もハルバードを手放し音無の腰に腕を回す。
あーはいはい、ごちそうさま、ごちそうさま。ラブラブなのはわかったからいい加減離れろや。
俺は一人疎外感を感じながら、遠い目をしてさっきよりも長い溜め息を吐く。

「日向?幸せが逃げるぞ?」

俺の溜め息に気付いた音無が声を掛けてくれたため、誰のせいだよ、とは言えない。

「あー…ホントお前らいい加減離れろよ。つか、音無は嫌じゃねぇのか?」
「何が?」

きょとん、と首を傾げる音無はすごく可愛い。

「それだよ、それ。野田にされるがままで、嫌とは思わねぇのか?」

俺が指差した先では、音無の手が野田に弄られていた。

「?別に嫌とは思わないぞ?」
「ふん、俺のものを俺がどうしようと俺の勝手だろう」
「おいおい、音無はものじゃねぇんだぞ?」

至極当たり前だというような顔で言う野田に俺がそう言うと、野田は眉間にしわをよせた。

「何を言っている。そんなの当たり前だろうが。バカか貴様は」

バカにバカと言われた…ってそうじゃねぇ!

「この際はっきり言ってやる!お前独占欲強すぎなんだよ!」

俺はソファーから立ち上がり、野田を指差しながら言うと、野田と音無は二人そろって呆けた顔をした。
あれ?俺間違ったこと言ってねぇよな…?

「え、何その顔」
「いや、だって…普通じゃねぇか?」
「は?」
「ふん、独占欲が強いなど、そんなわけないだろうが」

何だこいつら無自覚かよ…!
俺は今季最大ともとれるかもしれない溜め息を吐き出し、力なくどさりとソファーに腰を下ろす。
目の前の二人は初めいた体制に戻っていた。
あーもー!誰かこいつらを離してくれ…!


それがまるで自然体であるかのように


(さー作戦会議を始めるわよ)
(待て待て、ゆりっぺ!)
(何よ日向君)
(これに突っ込み、つかコメントは無しかよ!)
(……本人達が良いんならそれで良いんじゃないかしら?)
(あ、何かすんません…)


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