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□てのひらで感じる
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「サトシ!」

呼ばれて振り向いたサトシが最後に見たものは、焦った顔のデントとアイリスが駆け寄ってくる姿だった―――。

………………………………

「―――サ……から…………よね」
「大丈……きっと…………よ」

デントとアイリスの声が聞こえたのか、サトシが身動ぎをすると、それに気付いた二人がサトシに駆け寄って声をかけた。

「サトシ!」
「大丈夫!?」
「ぅ…デ、ント…?アイリ…ス?」

薄っすらと目を開けたサトシに二人は安堵の息を吐く。

「よかったぁ…ホントにもう、心配したんだからね!」
「ホントだよ、君はいつも無茶ばかりするんだから」
「………」
「…サトシ?如何したの?」

目を開けてから何の反応も示さないサトシを疑問に思ったデントとアイリスがサトシの顔を覗き込む。するとサトシは僅かに唇を動かし、言葉を紡いだが、その内容に二人は自分の耳を疑った。

「今、何て……?」
「俺、今、目ぇ開いてるか?」
「あ、開いてるに決まってるじゃない。何言ってるのよサトシ」
「もしかして、見えてないのかい…?」

よくよく見てみると、サトシの目は確かに濁っており、焦点が定まっていなかった。

「治るよね!?」

アイリスは、がしりとデントの腕を掴みデントに詰め寄った。
そんな必死な形相のアイリスを宥めながら、デントはジョーイさんを呼んでくるように頼んだ。
アイリスとキバゴが病室を出て直ぐに、サトシはデントに身体を起こしてくれるように頼んだ。デントはサトシの望み通り、サトシの身体に負担をかけないようにサトシの身体を起こし、手をとり声をかけた。

「大丈夫…なわけないよね」
「ん…まぁ確かに何も見えなくて不安だけどさ、いいこともあったぜ」
「え?」

意外なサトシの言葉にデントは呆気にとられる。

「デントってさ、温かいよな」
「…いきなりだね」
「何かさ、デントは雰囲気っていうか匂いっていうか、そんなのが温かい」
「サトシ…」

デントはきゅっとサトシの手を握り締め、開いている方の手をサトシの頬に添えた。

「それはこっちのセリフだよ、サトシ。君はまるで太陽みたいだからね」
「はは、何だよそれ」
「ホントだよ。君はとても温かくて皆を魅了して止まない」
「なっ何恥ずかしいこと言ってんだよ///」
「思った事を言ったまでだよ」

ふっと表情を和らげたデントは、赤くなったサトシにキスをしようと顔を近づけた…が、何者かによって阻まれてしまった。

「デント?」

黙ってしまったデントを不審に思ったのか、サトシがデントの名を呼ぶ。

「あぁ、ごめん。小さな騎士に邪魔されちゃってね」
「…?何だそれ」
「ピッカ!」
「ピカチュウ!」

ひょいと膝の上に乗ってひと鳴きしたピカチュウをサトシは手探りに抱きしめた。

「ピカ、ピカチュウ!」
「心配してくれてるのか?ありがとな」
「ピッカ!」

ピカチュウに頬ずりしているサトシをデントは微笑ましくも複雑な気持ちで見ていた。


てのひらで感じる


(ジョーイさん呼んできたわよ!ってどうかしたの、デント?変な顔してるわよ)
(あはは…何でもないよ)
(ふーん…ま、頑張りなさいよ、敵は大勢いるんだからね)
(…そうだね。でも、負ける気はないから)
(当たり前よ!)


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