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□ずっと隣に居ますから
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俺は暴力が嫌いだ。なのに周りの奴らは俺に喧嘩を売ってくる。買わなければいいと昔、門田だったか新羅だったかに言われたことがある。だが俺はそれよりも前に我慢することを止めていたからそんなこと出来なかった。そして俺は自分の力を制御できない。だから、だから……この状況はもう何度目だ。
俺の周りは今、ごみ箱が転がり、自販機は横に倒れ使い物にならなくなっていた。
俺はその壊れた自販機の上に座り、煙草をふかしていた。
ぼぅっと紫煙の先を見ているとざり、という音が聞こえた。ゆっくりと音のした方を向くと、来良の制服を着た奴が立っていた。

「みかど…」

自分でもわかるほど俺の声は掠れていた。帝人は転がっているごみ箱を避けながら俺の方に歩いてくる。

「大丈夫ですか?」

何がだろうか。
俺は首を傾げてじっと帝人を見上げる。すると帝人は苦笑を洩らし、俺の頬に手添えた。

「泣きそうな顔、してますよ」

帝人は親指で俺の目尻を撫でた。涙なんて、出ているはずがないのに。
帝人は俺の頬から手をはずすと、俺の隣に座った。

「帝人…?」

帝人の意図がわからず名前を呼ぶと、帝人は俺の手を握り俺に凭れてきた。

「大丈夫ですよ、静雄さん。僕はここにいますから」

キュッと手に力を込めた帝人は静かにそう言って、ふわりと微笑んだ。
俺は目頭が熱くなり、鼻の奥がツンとした。
この感覚を、俺は知っている。もうずいぶんと前になったきりで、すっかり忘れていた。

「み、かど」
「はい」
「みかど…、みかど…っ」

俺は帝人を抱き締め、帝人の首元に顔をうずめて、ただただ涙を流した。
どれくらいそうしていたのかはわからないが、帝人はずっと俺の背に腕を回していてくれた。

………………………………

「落ちつきましたか?」
「あ、あぁ」

俺は帝人から離れるとすぐに腫れてる(だろう)目を隠すためにサングラスをかけた。
もうずいぶんと日が暮れて、裏通りにあたるここはすでに薄暗かった。
俺は立ち上がると帝人へと手を差し出した。

「送る」

簡潔にそれだけ言った俺の手をとって帝人は立ち上がった。

「静雄さん」
「ん?」
「よかったらうちで夕食、食べていきませんか?」
「…いいのか?」
「はい、もちろんです」

ふわりと笑った帝人の顔はこの薄暗い裏通りでも俺にははっきりと見てとれた。


ずっと隣に居ますから


(あの、静雄さん)
(何だ、帝人?)
(手、繋いだままでもいいですか?///)
(お、おぅ///)


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