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□馬鹿それは反則だ
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今日も今日とて池袋では、喧嘩という名の戦争が、池袋の喧嘩人形こと平和島静雄と新宿の情報屋である折原臨也によって行われていた。

「死ねぇぇぇ臨也ぁぁぁ!!」

それは、池袋に住む人ならばすでに日常となり果ててしまったもので、ある者は被害を受けない程度の距離を保ち見物し、またある者は我関せずといった風に通り過ぎて行く。

「いい加減諦めてよ静ちゃん」
「あ"?それはこっちのセリフだ!」

バキンと大きな音を鳴らして静雄は近くにあった道路標識を手折り、臨也へと振り下ろす。
臨也は軽いステップでそれを避けるとポケットからナイフを取り出し、静雄に向ける。

「しつこい男は嫌われるよ?ま、俺としてはそっちの方が良いけどね」
「ストーカーしてる奴に言われたくねぇ、よ!」

静雄はまるでバットでも振るかのように道路標識を振り回すも、軽々と臨也に避けられる。

「チッ!ちょろちょろ逃げまわんじゃねぇよ!」
「やだなー、そんなの当たったら怪我しちゃうじゃん」
「しろ!つか、死ね!」
「そんな事になったら帝人君が悲しむよ?」
「悲しまねぇよ!お前がどうなろうとな!」

なかなか当たらないことに苛立ちながら、静雄はじりじりと臨也との距離を詰め、再び道路標識を振り上げた瞬間、軽い衝撃が静雄を襲った。

「…っ帝人!?お前危ないだろ!」

静雄は振り上げた道路標識を捨て、抱きついてきた帝人の肩に手を掛ける。

「危ないと思うならそんなもの振り回さないで下さい!」
「お…おぉ…悪い…」

いつもの穏やかな雰囲気からかけ離れた帝人の剣幕に驚き、静雄は動揺する。
帝人は静雄から離れると後ろを向き臨也に向かい指を突き付ける。


「臨也さんも臨也さんです!ナイフなんか出さないで下さい!誰かが怪我でもしたらどうするんですか!」
「俺は帝人君以外がどうなろうと、どうでも良いよ」
「僕はよくありません!」
「ど、どうしたんだ、帝人?今日はいつもと違うぞ…?」
「確かに。今日はいつもと違って積極的だね。まぁ、どんな帝人君でも可愛いんだけど」
「あ、臨也、てめぇ!」
「いい加減にして下さい!」

再び喧嘩勃発かと思われたが、帝人の一喝にその場が静まり返る。

「み、帝人…大丈夫か?」

はぁはぁと肩で息をする帝人を心配した静雄が、帝人に声を掛けると、帝人は勢いよく顔を上げて二人を睨む。
しかし、興奮したため顔は赤くなったうえに、若干涙目になり、それに加えて上目遣いになった、とても睨んでいるようには見えない帝人の顔に二人は息を詰まらせる。

「いつもいつも喧嘩ばかり…!いい加減にして下さい!……怪我でもしたら、どうするんですか…」

くしゃりと眉を下げ、顔を歪ませた帝人の目から涙が零れる。
それを見た二人は慌てふためく。

「帝人君!?」
「な、泣くな、帝人…な?」
「だっ、て…二人が、大怪我でもし、したら…っく、僕っ…」
「わかった、わかったから、ね」
「喧嘩しねぇから、頼むから泣かないでくれ」
「ぅ…っく、本当、ですか…?」
「うん」
「あぁ」
「…ありがとう、ございます///」

二人の言葉に泣きやんだ帝人は目尻に涙を残したままにこりと微笑む。
その顔を直視した静雄と臨也は顔を赤くするのだった。

((その笑顔は反則だっ…///))


馬鹿それは反則だ


(可愛いよ、帝人君!)
(っうわぁ!)
(てめ、臨也!帝人から離れろ!)
(やーだよ)
(殺す!)
(二人とも、喧嘩しないって言ったじゃないですか!)
((すみません…))


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