NARUTO

□過剰?いえいえ通常です
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奈良シカマル
奈良一族の嫡子である彼は、その愛らしさから一族全員に溺愛され、蝶よ花よと育てられた。
そしてそれは、下忍になった今も変わらなかった。
実際、一人の中忍がシカマルとぶつかったとき、シカマルが尻餅をついた。
そこで謝り、手を差し伸べておけば、まぁまだ良かったのだが、あろうことかその中忍は謝ることも手を差し伸べることもせず、ただ舌打ちだけをして去って行った。
それを偶然、否、必然的に見た奈良一族の一人の報告によって、その中忍は極々自然な感じで生死の境を彷徨う羽目になった、ということがあった。
そんな一族に溺愛されている彼、奈良シカマルは現在、七、八、十、ガイ班の四班合同任務にあたっていた。
任務ランクはC。それなのに何故四班合同なのかというと、任務内容が暗号解読部の手伝いだったからだ。
暗号解読部といえば、頭の良いエリートが集う、割かし忙しい部署である。
その解部から任務依頼があり、下忍四班が駆り出されたというわけだ。

「お待ちしておりました」

暗号解読部の部屋に入ると、初老の男に出迎えられた。

「早速ですが、任務の方を」
「はい。それじゃあサスケとサクラ、あとヒナタとネジは簡単な暗号くらいは解けると思うから、そっちに回って、残りは書類・巻物整理に回って」
『はーい』

カカシの指示に従い子供たちが作業をし始めようとした時、アスマから待ったがかかった。

「何?」
「シカマルも解読の方に回れ」
「ちょっと何言ってるのよ」
「そうだよアスマ。いくら自分の班の子が解析に回ってないからって、無茶言っちゃだめだよ」
「ちげーよ。お前ならいけるだろ、シカマル」
「…めんどくせぇ」
「そう言うなって。任務早く終わらせたいんだろ?ならちょっとはやる気出せ」
「…わーったよ」

渋々、といった感じでシカマルが了承したのを見てアスマが苦笑する。

「それでは話がまとまったところで、解読の方はあちらに簡単な種類のものが置かれていますのでそちらに、書類・巻物整理の方はあの出来上がったやつをそれぞれの国や里ごとに分けてください」
『はい』

下忍達は二手に分かれ作業を進めていく。
半刻ほど経った頃、サクラが解読の途中で手詰まった。

「ねぇ、サスケくん、ここ、わかる?」
「…いや。ネジは?」
「……」
「ネジさん?」
「あ、あぁ…すまない。何だ」
「ここ、わかりますか?」
「いや…ヒナタ様は?」
「えと、私も…」
「そっか、しょうがない…先生に聞くかー」
「あ、あの」
「何?」
「し、シカマルくん、には」
「あたしが読めないのにシカマルに読めるわけ…ってそう言えばシカマルは?まさか寝てるんじゃ…シカマルー!」

サクラがシカマルの名を呼ぶが、シカマルからの返答はなかった。
その代わり、整理をしていたいのから返答があった。

「シカマルなら目の前の山の奥にいるわよ」
「目の前って…」

サクラが前を見ると、解読を始める時には無かった巻物や書類の山が出来ており、上から覗き込むとシカマルが黙々とペンを走らせていた。

「これ、シカマルが全部やったのか…?」
「だがシカマルはドべ2だぞ」

ネジとサスケが疑わしげに書類に目を通すと、そこには意外に端正な字が書き込まれていた。

「全部解読されてる…」
「す、凄いね、シカマルくん」
「うそぉ…」

唖然とする四人に気付くことなくシカマルは黙々と作業を進めていく。
と、その時、解部の扉が開かれ一人の男が入ってきた。

「今日はずいぶんと人数が多いな」
「長!お疲れ様です!これはですね、前に依頼していたやつです」
「あぁ、そういえばこの間したな」

長と呼ばれた男と近くにいた三十代くらいの男が会話しながら長の机の方に向かっていると、急に長が立ち止った。

「長?どうかし――」
「シカマル様!」

長は男の問いかけを遮りシカマルの方へ向かう。
一方シカマルの方はその声に反応を示すことなくやはり黙々と作業をし、他の下忍と上忍は何事だと長を見遣る。

「シカマル様、何故ここにいらっしゃるのですか?!」
「んぁ?あぁシカヤリか。そういやお前解部の長だったな」

長がシカマルの肩に手を置いたことで、やっとシカマルが長の存在に気付いた。

「任務だよ、任務」

簡潔にそれだけを答えると、シカマルはまた作業に戻る。

「いけません、シカマル様」
「あ?何でだよ」
「シカマル様に作業をさせているなど皆に知れたらどうなるか…。ささ、シカマル様こちらへ。お茶を入れさせましょう」

長がシカマルの腕を掴み立ち上がらせようとすると、シカマルは不機嫌な顔になりその手を振り払う。

「任務だっつてんだろ」
「しかし…」
「しかし、じゃねーよ。俺は好きでやってんだ」
「…わかりました」

シカマルの言葉に長が渋々といった感じで了承し、肩を落とす。
その様子にシカマルはしょーがねぇなと呟き、じゃあひとつ頼みがあんだけどと言うと長は目を輝かせる。

「何でしょう」
「あー…もうちょい手応えがあるのがやりてぇんだけど」
「わかりました!それではこちらへ」

生き生きとした長がシカマルを別の場所へと導いていく。
その長とシカマルの一部始終を見ていた下忍や上忍達は唖然としていたが、唯一幼馴染達だけが呆れていた。

「なぁなぁ、あれってばどういうことなんだってば?」

いち早く正気に戻ったナルトがいのとチョウジに尋ねる。

「シカマルってね、生まれた時からそれはそれは一族から大事に育てられたわけよ」
「それはもう、物凄い溺愛ぶりだよね、今も変わらず」

ま、わからないわけでもないんだけどねーと苦笑し合う幼馴染二人。
その視界の端では長がシカマルに構いに構っていた。

「でもあれは異常だってば」
「それが昔からあんなだったから、あれが普通だと思ってるのよねー、シカマルも一族の人も」

呑気に言ういのに、下忍・上忍達は自分なら絶対耐えられないと思うのだった。


過剰?いえいえ通常です


(シカマル様、次はこれなんかどうですか?霧隠れの里のものです)
(おぅ、サンキューな)
(はい!)


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