NARUTO

□一時の休息
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火影。
それは木の葉の里の長、つまりは最高権力者である。
現在その最高権力者にあたる綱手は冷や汗を掻いていた。
その原因というのは、今綱手の目の前、正しくは綱手の使用している机の前に立っているシカマルである。
シカマルは、知らない人が見れば一瞬で見惚れる程の、しかし知っている人が見れば綱手と同じように冷や汗を掻くだろう程の見事なまでの笑顔だった。事実、その笑顔を向けられていないシズネでさえも若干冷や汗を掻いていた。

「どーゆーことか、説明してくれやがりますか?」

最早丁寧さがあるのかないのかわからない言葉遣いでシカマルは綱手に尋ねる。
綱手はごくりと一度唾を飲み込むと、意を決したように綱手は口を開いた。

「……私のミスだ」
「で?」
「すまない…」
「それだけですか?」
「…明日は休みにする」
「当たり前です」

綱手の言葉にシカマルはピシャリと言い放つ。その言葉には一切の容赦はなかった。
しかしそれもそのはず、シカマルはここ二日程書類整理やら暗号解析部の手伝いやらで徹夜だったのだ。シカマルの目の下には薄っすらと隈が出来ていた。

「頼んだぞ」
「…次からは気をつけてくださいよ」
「あぁ…」

じゃあ失礼します、とシカマルは綱手から渡された書類を抱えて火影の執務室を出て行った。
綱手はシカマルが出て行った後、はぁ、と息を吐き出し背もたれへと凭れかかり、肩の力を抜いた。

「まったく…末恐ろしい子供だねぇ」

ぽつりと漏らした綱手だが、自業自得というものだろう。

………………………………

シカマルは早速書類の整理にかかっていた。
その処理スピードは他を上回っており、二日徹夜してるようには見えない程だった。

………………………………

顔に火傷の跡がある男―並足ライドウはとある部屋に向かっていた。
そのとある部屋というのは彼の目下の恋人であるシカマルがいる部屋である。
ライドウは目的の部屋に着くと、ノックもなしに扉を開ける。
部屋に入ると、そこには休憩用にと備え付けられたソファーにだらりとだらしのない恰好で座って目を瞑っているシカマルがいた。
因みにシカマル以外に誰もいない事は部屋に入る前に気配で確認済みだ。
ふとライドウがシカマルの使っている机を見ると、他の机よりも圧倒的な量の書類が積み上がっていた。

「手伝うか?」

苦笑交じりにシカマルに尋ねる。

「んーん、もう終わった」

目を開けずに答えるシカマルはピクリとも動かない。
さすがだな、と思いつつそんなシカマルの隣にライドウは腰を下ろす。
するとシカマルは何の気なしにライドウへと凭れかかった。

「眠いのか?」
「二日徹夜」
「どーりで」

ライドウはシカマルの隈を指でなぞる。
ん、と薄目を開けてシカマルはその手にすり寄る。
その仕草はまるで猫だな、とライドウは思う。

「寝るか?」
「んー…いや、あれ、運ばねぇ、と…」
「期限近いのか?」
「今日中」
「なら、後で手伝ってやっから今は寝ろ」

ライドウは自分の肩の位置にあったシカマルの頭を自分の膝の上へと移動させ髪紐を解く。

「な、ライドウさん…」
「ん?何だ?」

シカマルはくっつきそうになっている瞼を必死にこじ開けながらライドウを見上げる。

「あした、仕事は…」
「休みだ、久しぶりにな」
「お、れも、あした、やすみ…」
「ホントか?なら、明日は二人でゆっくり過ごすか」
「う、ん…」

それだけを言うと、限界がきてしまったのか、シカマルは瞼を閉じて、すぅすぅと寝息をたてて寝入ってしまった。
ライドウは優しい手つきでシカマルの頭を撫でながら、明日をどう過ごすか考えていた。


一時の休息


(何か入りにくい、よな)
(あぁ…でも、ライドウさんなら気付いてるんじゃ…)
(かもしれんが…仕方ない、出直すか)
(そうだな)


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