DARKER THAN BLACK

□拍手@ 寒い夜の日
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AM.3:00――

静まり返った深夜、海月荘201号室の窓から奇妙な音が鳴っていた。
その音で浅い眠りから意識を浮上させた黒は、ひとつ盛大に溜め息をつく。隣近所の迷惑にならぬよう静かに窓を開けると、予想と違わない艶やかな黒ネコが窓ガラスをひっかく姿勢のまま固まっていた。

「………何だ?」

若干、申し訳無さげに微笑むネコに見下し、そっけなく言ってやる。

「その…なんだ……急に寒くなってきたな」

猫が紫の目を泳がせ、時たまチラチラと黒を見る。それに対して「そうだな」と返して冷たい空気を遮ろうと窓を半分まで閉めた。

「ちょ…っ!待て待て!」

その声で閉めかけていた窓から手を離し、猫を見る目を細める。

「何だ?」

同じ質問を投げ掛ければ猫はなんとも居心地が悪そうに唸りながら黒に向かって苦笑した。


「部屋………入れてくんねぇ?」


ああ、やっぱりか、とでも言うように呆れた溜め息を吐くと黒は半分まで閉めていた窓を全開する。すると黒ネコは驚いたように目を開いた。

「……いいのか?」
「そのために来たんじゃないのか」

そう言って黒は開け放った窓をもう一度閉めようと窓に手をかける。そうすれば猫は「入る、入る」と慌てたように黒の部屋へと身体を滑らせた。

「お前が妙に素直だから驚いたのさ。明日は雪かね」
「出ていくか?」
「じょ、冗談だ!」

その猫の慌てようが面白かったのか黒は口元に小さく笑みを作る。そして元いた布団に入り細目で猫を見やる。
猫は身体を暖めるようにまるまりなんとも可愛らしい格好。中身が中年男性だとは信じがたい。

「この部屋も寒いだろ?」

目を閉じ黒は部屋の隅でうずくまる黒ネコに話しかけた。
そう思うなら布団に入れればいいのだろうが、生憎中年男と一夜を共にする趣味はない。


「いや、外よりか数倍マシだ」

紫色の眼の片方を開けて、呟くように答える。

「……そうか」

そう言われればそうか、なんて頭の隅で考えて黒は布団に顔を埋めた。


「ありがとよ……黒」

低く響く声は眠気の帯びた頭のに心地よく反響する。
布団の温もりに包まれ、徐々に沈んでいく意識の中で「あぁ」と短く答えて闇へと進んだ。




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