DARKER THAN BLACK

□死神から贈り物
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「BK201……私の顔に何かついているかな?」

ノーベンバーがそう言えば黒は慌てて顔を反らした。

201の様子がおかしい、ノーベンバーは横目で黒を映しながらそう考える。
今日はどちらにも任務は下されず久々の休日、二人で過ごそうと決めて公園で待ち合わせた。
会った直後から黒は何かがおかしかったのだ。普段から冷静な彼なのに今日は落ち着きがなく、目をあちこちに泳がせていた。そして急に人の顔をまじまじと見て、声をかけると顔を反らす。
俗に天然と言われる彼だから不思議な行動は今に始まったことではない。―――だか。

「どうしたんだい?201…何か今日はおかしいよ」

あまりにも不可解な黒の行動にノーベンバーはできる限りの柔らかな口調で聞く。

「え…あ、いや……別に」

やはり、おかしい。

滅多に感情を表さない彼がこんなにも動揺している。いつもなら黒の意外な一面を自分にだけ見せてくれている、と若干浮かれるところだが今は違う。
どこか拒絶されているような怯えているような、どちらにしても今後の二人の関係構築には良くない要素なのだ。

「私は201に何か不愉快なことをしてしまったかな?」

そう聞けば黒は小さく首を横に振った。そうではないらしい。

「では…何か嫌なことでもあったのかな?何か言われたとか」

また首は横に振られた。この問いも間違いないであるらしい。
彼の機嫌を損ねている(機嫌を損ねているのかさえも分からないが)原因は何なのか。ノーベンバーは空色の瞳で同色の天を見上げて考えるが、どうも浮かぶのは最悪の答えだけ。


「BK201……私のことが嫌いになっ――」
「ち、違うっ!」

ノーベンバーが言い終わる前に遮ったのは黒の声だった。


「……201?」

その慌てた声に若干目を見開いてノーベンバーは黒の濃紺の瞳を見つめる。今度は目を反らされない。

「嫌いじゃ…ない。ただ、こういうのは引かれるんじゃないかって……」

「こういうの…とは?」

それに黒は渋るように目を伏せるが、一つ唾を飲み込んでポケットの中に手を突っ込んだ。
何かが擦れ合う乾いた音が鳴りゆっくりと抜かれた手の中には桃色の包みが一つ。
手のひらに収まる程のそれを黒はノーベンバーの胸に無言で押し当てた。

「これは……?」

そのまま受け取ってしまったが一体この包みが何なのかは分からない。彼に限って「実は小型爆弾だ」なんてことはないだろうが、得体の知れない物体を素直に信じることも難しい。

「二月十四日…」
「え?」
「今日は二月十四日だ…」

ノーベンバーは黒から出された二月十四日の日付を頭の中で復唱する。すると自ずと答えは出てくるもので。

「ああ…そうか。……バレンタインか」


そう言いながら丁寧に縛られた赤のリボンを解いて、桃色の紙を広げた。
中には三つのチョコが可愛らしく並んでいる。

「201が作ってくれたのか?」

その問いに黒は首を縦に振る。肯定らしい。

「ありがたく頂くよ」

そう言ってノーベンバーは右端の白いハートチョコを口の中に放り込んだ。
ミルクの優しい甘さが口の中に広がって溶けていく。

味はもちもん美味であるが、なんと言っても愛しの彼が作った手料理。小さくなる度、黒への愛情が強くなっていくのは当たり前で。

ノーベンバーが視線を横にずらして見ればチョコを送った本人は耳まで真っ赤にして、下を向いていた。
そんな彼の耳元まで口を近付けて言ってみる。


「ありがとう……愛しいBK201」



次の瞬間、彼からの愛の鉄拳が飛んできたのはまた別の話。


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申し訳ない


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