恋修

□不器用な唇
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「苦い、」



これ、



いつ頃からか、年下の赤髪の口癖になってた



「檜佐木さん、苦い」



蕩ける様な口付けの後、毎度のように呟く



だからなんだっつーんだよ、



「俺に煙草止めろって言ってんの?」



そりゃ到底無理な相談だ
お前に鯛焼き止めろって言ってんのと同じだぞ



「そりゃ無理っすね、」



ははは、と笑いながらもイマイチ不服そうに変態眉毛を寄せる



「……何だよ」



「いや、」



でもやっぱ止めて欲しいなぁ、と後頭部を掻きながら俯く



「俺苦いの苦手だし、」



あんたには身体、大事にして欲しい



その眼が余りにも真剣だったから、



否定することすら忘れてて、



仕方ねぇな、って笑っちまった



「じゃあ、吸ったらエッチ禁止ね」



「何だそれ」



「そんくらい言わなきゃ止めねぇでしょ、」



がはは、と下品な声を上げる目の前のアホ面に思わず溜め息を漏らす



「つーか俺もお預けくらうの嫌だし」



俺の為にもここは一つ、



なんて笑み溢されちまったら、思わずつられちまうじゃねーか



「努力します」



「そこは止めますって言えよ」



「止めますん」



「どっちだよ」



「うるせぇな……」



てめぇの為に止める、なんて



死んでも言ってやらねぇからな





fin.
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