いろいろ

□一枚上手
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「相変わらず懲りないですね、貴方も」


「五月蝿ぇ、ほっとけ」






呆れた声で放たれた言葉は正直耳が痛いもので、結局悪いのだって自分なのは充分分かっているが


どうもこいつの前では素直な反応が出来ずにいる









「貴方だけの為の栄養剤じゃないんですからね」



右腕に通された細い管を弄りながら吐き捨てる皮肉にカチンと来つつも正論なだけに言葉に詰まる


いや……結局いつも浴びせられるやや冷たい視線に俺が負かされているだけなのだろうけど





「分かってるって…」


「分かってる人の行動とは思えませんが」


「……だって」


「だってもへったくれもありません」


「…八席のくせに」


「体調管理の指導に席番が関係あるんですか?それとも何ですか…副隊長のくせに、自分の体調管理も出来ないんですか?」

「……」


「たかが八席ごときに馬鹿にされて悔しいなら、言われない様にすればいいじゃないですか」


「……」


「難しい事言ってないでしょ、食べて寝ろって言ってるんです」









どれもこれもが正しい事ばかりで情けなくなる



忙しさにかまけて飲まず食わずに睡眠不足でぶっ倒れるのは最早得意分野と化しつつある俺には痛い言葉達ばかりだ













「……なんなら」



点滴の管に触れていた指が俺の髪を優しく撫でるのにピクリと反応する





「僕が添い寝してあげましょうか?」





耳元で囁くテノールの響きが妙に擽ったく俺の胸に溶けていくのが分かり自然と顔が熱くなる


「ばっ、馬鹿かお前っ」


ベッドから飛び起きるが笑いながらそれを制され再び枕に頭を落とす羽目になる




「さてさて、お姫様はお休みのお時間ですよ」


そう言って額に唇を寄せるこいつが妙に大人びて見えてしまう


「……っ」





唇が触れた場所を咄嗟に手で押さえると静かな温もりに触れた気がした










「お休みなさい、修兵君」


笑いながら部屋を出ていく後ろ姿は余裕めいていて気にくわなかった



何より腹が立つのはそんなあいつの行動に一々反応する俺自身















「……荻堂のくせに」








嗚呼、やっぱり俺はあいつに勝てそうもない








(からかいがいがあるよなぁ…)


fin.

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