いろいろ

□指切リ
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何か言いた気な表情を浮かべるものの、檜佐木さんは一向に言葉を創りだぜずにいた。



「怖い顔が余計怖いですよ」
「・・・うるせぇよ」
「・・・素直じゃないですね、檜佐木さんって」
「オマエが言うな」


はぁ、と短い溜息を吐くと真っ黒で猫毛の髪をぐしゃぐしゃと掻き回す。



「痛いほどわかる、それについてはな」
「そりゃ、そうですよね・・・」


うちと違って東仙隊長は真面目な人だったから、悲鳴を上げるのはむしろこの人のほうだ。



「・・・無理はすんな」
「・・・そっちこそ」
「・・・後輩が生意気言ってんじゃねぇよ」
「・・・先輩面ばっかしないで下さい」
「オマエも阿散井みたいに素直だったらなぁ・・・」
「あんな奴と一緒にしないで下さいよ」




こんなやり取りも昔から何も変わっちゃいない。
阿散井君がいて、雛森君がいて、檜佐木さんがいて。
僕達三人はいつもこの人に助けられた。
そしてそれは、多分この人も。




一体何が変わってしまったんだろう。



隊長がいなくなったこと?
いや、違う。



多分、本当は何も変わってなどいないのだろう。


多分、変わらなければいけなかったのだろう。



タイミングを計り損ねた末路は目に見えている。
飛び立てなかった翼など、剥ぎ取ってしまえばいいのだ。
そうしてそこから、ずっと動かなければいいのだ。


強くなれなかった自分への戒めとして。









「・・・そろそろ、戻りますね」


予定よりも長居してしまったことに気がつくと、煎れてくれた緑茶を飲み干し立ち上がる。


「・・・無理はすんなよ」
「だから、そのままそっくりお返ししま・・・っ・・」


急に立ち上がったからか、再び目の前がぐにゃりと歪んだ。
今朝の立ち眩みよりも数段性質が悪い。


「吉良っ」


崩れ落ちそうな身体を檜佐木さんに支えられるが、頭痛が酷い。
未だ歪む視界の中ではあるが、眉間にたっぷりと皺を刻んだ檜佐木さんが見えた。
大丈夫、と言葉に出そうとするが、割れそうな頭を必死で抑えることしか出来ない。
身体から力が抜けていくのがわかった。



「お、おいっ・・・吉良?吉良っ!」


あーあ、また心配かけちゃったな・・・
















イヅル、と



遠くで僕を呼ぶ声が聞こえた気がした。



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