いろいろ

□幸せなキスのはじめかた
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「何、泣いて…っ」






言葉をつむぐより前に襟元を掴まれバランスを崩したかと思うと、唇に修兵のそれが触れる。

といっても柔らかいその感触ではなく、
ガツンと小さく鈍い音をたてるものだったが。






突然のことにふいをつかれ、そのまま後ろに押し倒される形になり、後頭部を床に派手に打ち付けうめき声が漏れる。


「てめぇ、何すん…っ」


不可抗力の痛みに思わず怒鳴りかかるが、腹の上で馬乗りになった修兵の唇が再びガツンと勢いよく重なり言葉を遮られる。


「しゅ、へ…やめろ…っ」


力をこめて、しかしその細い肩が折れてしまわぬように押し戻すと、乱れた呼吸を整える様子もなく、溢れんばかりの涙を浮かべた修兵と目が合い、その妖艶で危うげな姿に思わず息をのんだ。









「けんせーさんは、キスの下手な俺は嫌いですか?」



暫く続いた沈黙を破るかのように、消えそうな声が響く。



薄らと血の滲む唇を噛みしめ、俺の襟元に震える手を伸ばす。




「修兵?どうし「けんせーさんを満足させてあげられない俺は嫌いですか?」



言葉を遮られ、Yシャツのボタンに手をかけゆっくりと外されていく。








突然の展開に頭がついていかなかったが、正直この状況はおいしい以外の何者でもない。


今まで、大事にしないと、大切に扱わないとと、キスすらしてこなかったこともあって、ゆっくりと焦らすかのように丁度腹の辺りのボタンまで外した修兵の冷たい指が軽く肌に触れると、僅かに残っていた我慢という名の理性がぷつりと音を立てた気がした。


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