いろいろ

□そうやって進んでいく
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強そうな名前じゃねぇか



そう笑った貴方の声が響く。





そうやって進んでいく





「本当にいいのか?」


別段声色を変えたわけでもないだろうに、やけに重く響いた声に小さく、でもはっきりと頷く。

彼は彼でそんな俺の主張を引っ繰り返そうとは思っていないらしく、そうかと呟いて俺の頬を冷たい指でなぞった。



「泣くだろうよ、あの人は」


「何で」



別に聞き返す必要なんてなかったけど、とりあえず建て前としての台詞を零せば、判ってるだろうとこれまた建て前の返事が戻ってくる。
これだから一緒に居るのが楽なのだと笑いかけると、小さく馬鹿野郎と小突かれた。



「後悔すんなよ」


「しないよ、後悔なんて」



悔いが残るとすれば、それはあの少し蒸し暑かった夜の事だけ。


あの人がさよならも告げずに消えた、あの夜の事だけ。


答えの見つからない禅問答を繰り返す。
どうしてあの時彼を引き止めなかったのだ、と。




「だから、いいんだ」


「修、」


「拳西と、同じがいいんだ」



同じ出来事に笑い、
同じ景色を見て、
同じ風を感じたい。


離れていても、
生きる世界が違っていても、
もしかして死んでいたとしても。




「俺、強くなるんだ」




震えそうになる声は、まだまだ貴方のように凛とはしていない。
貴方に近付く為の盛大な武者震いなのだと大法螺を吹けば、また貴方は困ったように笑ってくれるだろうか。



「痛ぇぞ」


「だから平気だってば」


「だってお前泣くだろ?」


「そーやってすぐからかうんだから」


泣かないよ。
だって泣いたら、怒られるだろ。
それからいっぱい撫でられるだろ。



泣くな、って。



だからさ、










「もう、泣かないよ」






fin.

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