短篇
□水の中、僕は彼の夢を見る
4ページ/4ページ
銀時は、新八の姿を求めて、船の中をさ迷う。
間、攻撃してくる者は、皆、地に伏していた。
瞳の端にちらりと見えた紅い着物。
かまわず木刀を振り上げる。
刹那、ふたりの間にひとりの少女が割って入り、高杉を守るように立ち塞がる。少女の手にはひとふりの刀。
刃を向け、刀で応戦する少女の姿は次見た時には、少年の姿に転じていた。
瞳が少年の姿を捉える。
「新八」
銀時の唇から名が零れる。
「銀さん」
聞きたかった声を聞いた。
新八の瞳は、もう銀時を映すことはなく、ただ、己の愛しい男だけを見ていた。
「新八、そろそろ行くぞ。今日はここまでだ」
言われた新八は、刀を納め、高杉の後を追う。
もう、遅すぎたのだ。
ふたりの道は分かたれてしまった。
懐かしい時間はもう帰ってこない。
銀色の鬼は、嘆くことしかできなかった。
.