Short Novel
□傾いた天秤
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赤也はコクリと小さく頷くと、目を伏せながら病室を出て行った。
幸「(本でも読もうか...。)」
赤也が帰って暇になったので、読みかけだったハズの洋書を読み始めた。
柳生がオススメだと、貸してくれた物だ。
カチッ..カチッ..カチッ..カチッ...
規則的に進んでいく秒針の音が、耳に心地良い。
ふと、目を洋書から離すと、床に落ちている紙に気が付いた。
その紙はクシャクシャに丸められていて、ポツンと真っ白な床に落ちている。
否、置かれているような気がしてその紙を手にしてみた。
幸「(こんな紙、落ちてたかな....。)」
俺は不思議に思いながらも、そのクシャクシャな紙を丁寧に広げていった。
その紙はどうやら手紙らしい。
そしてその手紙を書いた主は、自分の最愛の恋人だと記されている。
幸「(赤也からの手紙?)」
俺は余計不思議に思った。
あの赤也が手紙を書くなんてことがあるのだろうか。
それに何故、書きかけで失敗している訳でもないのにクシャクシャになって落ちていたのだろうか。
幸「とりあえず、読めばわかるね...。」
俺はゆっくりと、お世話にも綺麗とは言えない字を読み始めた。