Short Novel
□視線の先のアナタ
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岳「なあ宍戸...また見てるぜ?」
岳人の声に、ピクリと肩を震わせる。
視線はさっきから薄々感じていたところだ。
岳「お前、日吉に何かしたんじゃねえの?」
岳人の問い掛けに一瞬頭を悩ませるが答えはNO。
レギュラーのことかとも思ったが、そんな過去のことをうだうだと引きずる様な後輩ではなかった筈だ。
......多分。
宍「別に何もしてねえよ。」
岳「ふーん...。」
跡「岳人ッッ!!!!喋ってばかりいねえで次、コート入れッッ!!!」
跡部の怒声に、岳人は小さく飛び上がると慌ててコートに入っていった。
そんな岳人に苦笑いしながら、俺もダブルスの練習をしようと、長太郎を探して辺りをキョロキョロと見回す。
そして、チラリと目が合ってしまった。
虚ろな瞳で俺をジッと見てくる若と...。
若が俺を見つめる...といったら気持ち悪いが、視線が離れなくなったのは2週間程前だった気がする。
その日は、外で体育があり俺達はサッカーをしていた。
必死にボールを追い掛けていると、フッと屋上が目に入る。
Tシャツで汗を拭いながら屋上を見ると、そこには若の姿が。
宍「(若がサボリ何て珍しいな...。)」
初めはそれ位にしか思わなかった。
だが、次の日から外で体育がある日、若は必ずそこに居た。
別に何をするわけではなく、ただ居るだけ。
しいて言えば、俺の方を向いている気がする。
いや、若は確実に俺の方を見ていた。
そんなことに気が付いてしまえば、気にもなるわけで。
意識してみれば、若は体育中は勿論部活中だって熱い視線を俺に送っていたのだ。
それがことの始まり。