Short Novel
□傾いた天秤
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俺には、年下の可愛い恋人がいる。
赤「部長ッ!!」
大きな声を上げながら、ガラガラとドアを開けて病室に入ってきたのは、立海大2年エースの切原赤也。
俺の恋人だ。
今日は朝から雨だったので、ミーティングだけで終わったらしい。
だからいつもは間に合わない面会時間にも間に合ったんだろう。
赤「具合、どうッスか?」
心底心配そうに、俺の体を心配してくれる赤也に小さく笑みを向けた。
幸「大丈夫。今日は何ともない。それに、赤也がせっかく来てくれたんだ。寝込んでなんていたらもったいないだろ?」
そう言って、クセの強い髪を撫でてやると赤也はハニかんだように笑った。
それからは、赤也がたくさんのことを話してくれた。
テニス部のことは勿論、今学校で流行っていることや、人気の芸能人、美味しかったお菓子など...これでもかという程喋り続けている。
それでも俺は、時折相槌を打ちながらその話を楽しく聞いていた。
赤「あ...もうこんな時間ッスね...。」
気付けば、あと5分程で面会時間が終わってしまう。
赤也の顔が、目に見えて暗くなった。
幸「赤也、そろそろ帰りな。」
俺は出来るだけ優しい笑みで言った。
赤「....。」
赤也は無言で寂しそうに唇を噛むと、ギュッと俺に抱き付いてきた。
幸「...俺は大丈夫だから、赤也ももっとテニス、頑張るんだよ?」
俺は最後に、優しく触れるだけの口付けを頬に落として赤也を離した。