Short Novel
□帰る場所のある蝶
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トンットンットンッ...。
無言で雅治の家の階段を上がる。
ガチャッ。
女「あ!!」
雅治の部屋のドアを開けると、そこには上半身裸の雅治と今まさに服を着ようとしている女。
女は驚いた様に目を丸くしている。
女「じゃ、じゃああたし帰るね。バイバイ、仁王君。」
女は気まずそうにチラッと俺を見ると慌てて服を着て、そそくさと部屋を出て行った。
部屋に沈黙が流れる。
先に沈黙を破ったのは俺だった。
ブ「この前借りたCD返すぜぃ。」
出来るだけ普通に、いつも通り言った。
仁「...あぁ。」
ブ「じゃあ、今日はこれだけだから帰るわ。じゃあな。」
それだけ言って俺は足早に雅治んちを出た。
雅治の浮気は今回が初めてではない。
むしろ、数え切れない位だ。
ブ「(雅治が初めて浮気したのっていつだっけな...。)」
それさえも思い出せない。
だけどそん時は辛くって悲しくって涙が止まらなかったのはよく覚えている。
それから何回も雅治は浮気を繰り返して、その度に俺は泣いて...。
でも、人間の慣れってのは怖いものでいつの間にか涙も出なくなってた。
それ所か最近は浮気現場を見ても何も感じないし、ましてや涙何か一滴も出やしない。
ブ「人間ってこういうことで壊れない様に賢く造られてんだよなぁ...。」
いっそ壊れてしまえばいいと何度思ったことか。