めいん

□それは東へ吹く風
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鉄は熱いうちに打て。

出来たては熱いうちに食え。







先代の偉人が述べた名言を脳内で半数しながら、その言葉の奥深さを反芻して噛み締める、そんな朝。







ついさっきトレーニングも終わり、片付けなければならない仕事を指折り数えて溜め息を吐きつつ。


ふと、最近は
「頑張ってください!」
というあの優しい声を聞いてないコトに気付いた俺だったりする。








いやいやいや、待て、俺。

普通、付き合い始めって、もっと、こう、甘酸っぱい物なんじゃないか?

…出発する直前に告白したのがいけないんだけどさ。







俺の時間とイエローの時間は微妙にずれてて、ここ最近は仕事を終わらせるとイエローの就寝時間を長針二回り位オーバーしているコトが多かったのもあり、こっちに来てから電話もろくにしていない。


というか、全くしていない。


そんなんでいいのか、と考えながらも、修業の旅の時はずっと音信不通だったりもした為、そんなもんか、と思ったりしてる自分もいる。








っていうか、今更電話って。

かけて何を話すんだ。
ってまぁ、近況報告か。

正直、告白後初の顔合わせでどんな顔すればいいのかもわからない。





という本音も抱えつつ、ふと空を見ればそれは高い高い青。
風が思ったより強くて、その青の中を薄い綿の様な雲が流れてく。








ふと、思いついて、



傍らの茂みに手を突っ込み、

綺麗な葉を何枚か抜き取って、

拳の中に閉じ込めたその葉達に唇を落とす。







落とした唇と葉が触れ合う度、

自分のあの娘に想う愛しさを、

その葉に少しでも籠められるように、

祈るように。







そして、拳を解けば


枷を外された葉は強く吹く風に乗って、高く高く舞い上がる。







それをみながら、ただ、おもう。


葉に込めた思いが

どうかどうか

一枚でも君の街に届けば良い。








コトノハを贈れない、不器用な俺だから。



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