Short Stories
□ポイズンミスト
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「これじゃ、埒が明かないね」
――ヒュッ
胸元から取り出すと相手に向かって小さなモノをほうり投げる。
「ファイア、……何がし」
「トルネド」
彼がファイアを唱え、先程投げた小さなモノを爆破させた。
私の行為を不審に思った彼が言葉を言い終える前にスペルを唱えると彼の手前で突風が発生し、それがやがて一面に拡がる。
「どこを狙って…‥、っ!」
タンと地面を蹴ると大きく後ろに跳び移った。
彼は喉に手を押さえ、まっすぐ眉を潜めながら、こちらを見据える。…いや、睨んでいる。
彼の表情をみると言いたいことはわかっていた。
「―――ポイズンミスト」
意味は、『毒霧』。
さきほど、彼に投げたのは液体状の猛毒の入った小瓶だ。
それを彼はファイアで爆破してくれたおかげで液体状の猛毒は蒸発し気体になり、あとは気体になった猛毒をトルネドで一帯に飛ばせば毒霧となる。
「チッ、トルネド!」
「――ムダだよ。ここは隔離された空間。さっきの突風で毒は全体に拡がったのだから」
いまさら、そんなことをしても遅いよ。突風を起こし、毒を払おうとしている彼に告げた。
そうだよ。此処はどちらかが死ななければこの空間は消えない。
「貴方が私を殺すのが先か、
私が貴方を殺すのが先か、
それとも、
毒に侵されてともに果てるか」
さぁ、これで舞台は調った。
フフ、薄く嗤うと、これで最期になるかもしれない愛刀をにぎりしめ、体勢をととのえる。
「始めましょう。紫箱の死闘を」
最期の言葉を合図にお互いに地を強く蹴った。