Birthstone
□ケシ・パール
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戦雲が暗く大陸を覆い
この、殺伐とした空気の中で、
「さぁ、戦端を開こうか」
迷いのない主の声も、
今はもう、疾うの昔に感じる
一瞬だった
それほどまでに
己の無力さを
思い知らされる戦だったんだ
悔いる事があるとすれば、最期にまで主の傍で、闘えなかったことや、主との約束を破ってしまったことなど、数えきれない程あり、
死んでも死に切れない
って、このことだろうかと思う。
まったく、未練がましい
今まで、さんざん『死ぬことに躊躇(ためら)いはない』と言い張っていたヤツが聞いてあきれる。
己を嘲笑いたかったが、頬に力が入らない。…いや違うな。身体に力が入らなかった。
指先に触れている草や土の感触すら感じない。額をつたう血も。
己の身体が
自分のモノではないような感覚
生への執着心がため、先程から抗(あらが)ってきた襲いくる睡魔に身を任せると、
─静かに眼を閉じた。
ひとときの休息
次に眼を開けたら
そこは、きっと黄泉の国だから
今だけは、少しの安らぎを